無傷の20連勝。恩師と同僚とライバルが見た「2013年の田中将大」 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki

 一方で、投球内容やボールの質はそれほどでもないと見る向きもある。マスクを被る嶋基宏の評価はこうだ。

「開幕して数試合は本来の田中の調子ではなかった。交流戦になって、カットボールを使うようになってから、徐々に調子を取り戻してきた」

 ボールの質や投球内容はかならずしもここ数年より上ということではないというのだ。

「今年は悪いなりにもコントロールミスだけはしないように心がけている。ただ走者が出ると、球速もボールの切れも増してくる。ピンチのときの気迫が違います」(嶋)

 ボールは田中が持っている能力からすれば、目を見張るようなものではないが、集中力や気迫に過去には見られなかった要素が加わったということなのか。チームメイト以外にも同じような見方をする選手がいる。オリックスの糸井嘉男もそのひとりだ。

「すごい球を投げているかといえば、そうではない。手が出ないような球はほとんどない。でも、ヒットになる球も少ない。一球一球、すごく丁寧に投げている印象ですね」

 そしてもうひとり、かつて楽天でチームメイトだったドラゴンズの山崎武司だ。

「交流戦で対戦したけど、ボールだけ見たら無傷の20連勝というようなものじゃないよ。3、4敗していても全然不思議じゃない。でも、メンタル面がすごい。強い気持ちを持ってやっているのがわかる」

 交流戦のとき、田中は山崎にひそかにこう宣言したという。

「まだ7勝か8勝の時だったけど、今年は25勝しますよって宣言していた。25勝すればプロ通算100勝になる。それを今年中にやり遂げるって言ってたね」

 近年のローテーション投手は多くても26~28試合の先発が普通だ。その中で25勝というのはほとんど無傷で勝っていかなければ達成できない。それをやり遂げようというのだから、モチベーションが他の投手と全く違っている。

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