【プロ野球】何のための制度導入だったのか?育成選手の知られざる現実 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 佐賀章広●撮影 photo by Saga Akihiro

 するとその理由を、大立はこんなふうに話してくれた。

「10月に入ってすぐ、寮に上の方がいらして戦力外の選手が集められました。僕もその中に含まれていて、でも、みんなが『お前はワンクッションあるだろ』って言っていて(笑)。そうしたら、やっぱりワンクッションあると言って頂きました。でも僕は、もう一度、同じ巨人の育成では、前に進めないと思ったんです。みんなに言われましたよ。お前、革命児だなって(苦笑)」

 確かに、いかにもやんちゃそうな大立は、口元を尖らせて、こう続けた。

「育成という制度ができてプロに入りやすくなったとは思うんです。ただ入った後、どうなるかが大事で、高校生なら大学や社会人に行ってからでもいいと思います。育成でもプロに狙われる高校生ならどこか入れるところはあるでしょう。これが大学生だったら、わずかなチャンスに賭けて育成でもプロに行くという気持ちはわかりますけど、高校から育成でプロに入るのはもったいないかな、と思います」

 それは、なぜなのか。

「僕は育成でしたけど、チャンスをいっぱいもらいました。でも他の育成の人たちはイヤな思いをしていたんじゃないかと思います」

 大立は多くを語らなかったが、元巨人の育成だったある選手がこう明かす。

「育成の選手が二軍の選手と同じようにチャンスをもらえているかといえば、そうではなかった。“第2二軍”(育成選手が増えすぎた巨人に去年、立ち上げられた事実上の三軍)で試合に出て、そこでいい結果が出ようが出まいが、そこから二軍に帯同できる選手はごくわずかで、いたとしても同じ選手ばかり。その選手も、二軍の試合に出ることはほとんどありませんし、遠征には帯同することもありません。みんな、愚痴ばかりでした。二軍に行ったとしても試合に出られず、すぐに第2二軍に戻ってくるというのもしょっちゅうだった。そりゃ、何だよという気持ちにもなってしまいます」

 しかし、巨人のあるファームのコーチに訊くと、そんなことはないと否定した。

「契約上は支配下だの育成だのという選手がいますが、現場に来ればそこは関係ありません。ずっと二軍にいた育成の選手もいたし、支配下でもずっと第2二軍にいた選手もいましたから」

 首脳陣が公平に扱ったと言い、公平に扱われたはずの育成選手の中には不公平を感じていたものがいる。背景にあるのは、支配下と育成という差別である。

 もちろん、実力社会に差別はあっていい。ただ、なぜ彼らが不公平を感じるのか。それは育成とは名ばかりの、実戦機会に恵まれない劣悪な環境があるからだ。

<後編につづく>

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