【プロ野球】谷繁の誤算。巨人の日本シリーズ進出を決めた伏兵たちの実力 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

第5戦でサヨナラヒットを放ち、ナインから手荒い祝福を受ける石井義人第5戦でサヨナラヒットを放ち、ナインから手荒い祝福を受ける石井義人 中軸はある程度封じられたジャイアンツだったが、下位打線の活躍はめざましかった。面白いのは、このシリーズ、ジャイアンツの打順でもっとも打点を挙げたのは3番でも4番でもなく、5打点の8番だったことだ。日替わりの8番が打点を挙げるような打線は、やはり奥が深い。
 
 この試合だけでなく、サヨナラ勝ちした第5戦も戦力の厚みを見せつける内容だった。
同点の9回裏、この回からマウンドに上がった岩瀬仁紀に対して、まず右の矢野謙次を代打に送る。矢野が安打で出ると、すかさず代走に鈴木尚広を送った。単独盗塁は考えにくいケースだが、それでもドラゴンズバッテリーは鈴木の足を警戒せざるを得ない。打者への配球は単調になり、古城に三遊間を破られた。矢野、鈴木というふたりの控えでたちまちサヨナラのチャンスを作ったことになる。

 このあと、ジャイアンツは代打に寺内を出して送りバントを決め、敬遠で満塁になったあと、まず谷佳知を代打に立てる。ドラゴンズが岩瀬から右の山井大介に代えると、今度は谷に代えて左の石井義人を代打に送った。この回、ジャイアンツはじつに4人の代打をコールしたことになる。しかも、最後に出てきたのが代打成功率4割を超える石井だった。5回に同点になったあと、こう着した展開の中で、最後の最後まで切り札を取っておくことができるジャイアンツの戦力に、さすがのドラゴンズも脱帽するしかなかった。シリーズ終了後、キャッチャーの谷繁元信は次のように語った。

「ポイントになる選手だけを抑えてもダメ。全員を抑えないと短期決戦では勝てない」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る