【プロ野球】もうひとつのプロ野球開幕。高津臣吾、43歳の挑戦 (2ページ目)

  • 大田誠●文 text by Ohta Makoto
  • (C)新潟アルビレックスBC●写真 photo by (C)Niigata Albirex BC

 そんな男が2012年、投手兼任監督という難しい職務を担いながら、ついにラストシーズンを迎える。高津は「監督業を7割から8割、残りの3割から2割を投手」と語っているが、多くのファンはプロ野球を代表する偉大なるストッパーの最後の勇姿を見に球場へ足を運ぶはず。しかも「バッター俺」は聞いたことがあるが、「ピッチャー俺」をいつどういう状況で告げるのか、投手・高津臣吾に注目が集まる。

 しかし、現時点で高津が重きを置くのは、あくまでも監督業。43歳の新指揮官が、いかなる野球を目指すのか興味が尽きない。就任会見以来「プロとして勝利にこだわる」と公言し続け、昨シーズン、リーグチャンピオンシップに進出しながら苦杯を舐めさせられた石川に対して「忘れ物を取りにいく」と勝利への熱い想いを語ってきた。
 
 合同合宿前日、選手を集め初めて行なったミーティングで2012年のテーマ「進化」を発表。その意味を高津は、「1球1打すべてで進化する。投手は抑えて進化、打たれても進化。打者は打って進化、凡打でも進化してほしい」と選手に伝えた。

 これは、高校・大学で2番手投手に甘んじながらプロ入りし、異国の地で挑戦し、ライバルの高い壁を乗り越えマウンドに立つため、1球1打全てのシーンで疑問を抱き、観察し、考え抜き、チームの勝利のために進化を続けてきた自身の経験から生まれたものだ。

「野球が上手くなりたいし、どうやったら相手を抑えられるか、と常に疑問を持ち考えてきた」。この『反骨精神』そして『野球小僧の心』こそ、高津臣吾の野球人生を支えてきた最大の要因なのだ。昨シーズンからチームのキャプテンを務める清野友二選手が話してくれた。

「高津さんは、勝利へのスイッチが入った時の気迫は怖さを感じるくらい。その気迫を見習って今年は戦いたい」
 
 日本人で初めて4カ国のプロ野球を経験した高津監督は、「日本の細かい繊細な野球とアメリカの豪快で大胆な野球をミックスして良い指導、チームができたら、自分の経験を生かしたということになると思う」と語った。それぞれの良いところ、悪いところを理解している。だからこそ、これまでにない新しい野球が生まれるのではないかと興味は深まっていく。

 高津にファンへのメッセージを求めると、「面白い野球をするので、球場に観に来てほしい」と返ってきた。43歳の新人監督・高津臣吾が、新たな野球の境地に挑む舞台。数々の記録と記憶を残してきた現役21年目の投手・高津臣吾が、最後の戦いに挑む舞台。4月21日、もうひとつのプロ野球が開幕する。

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