【プロ野球】久々に登場した巨人の高卒エース候補宮國椋丞にかかる期待 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 日下康祐●写真 photo by Kusaka Kosuke

 槙原氏は、宮國がルーキーだった昨年、しっかりとファームで体力作りに専念したことがよかったと言う。

「高卒のルーキーがいきなり一軍でやると、技術よりもまず体力面で苦しくなってしまう。僕はファームでじっくり走って体力をつけたのが2年目の飛躍につながった。宮國も体力面で基礎をしっかり固めることができたのが大きかったと思いますよ」

 プロ初先発の舞台は、チームが連敗中で、しかも敵地・甲子園。それに大観衆が入る日曜日のデーゲーム。重圧を感じてもまったく不思議ではない。それでも原辰徳監督は先発に使い、宮國もそれに応えた。

「本人も立派でしたけど、監督の決断も見事でした。ひとつ間違うと、いくらいい素材を持っていても、自信を失いかねない。僕も、延長10回を投げ切ってプロ初勝利を挙げたことが、その後の大きな支えになった。宮國もおそらく自信を持ったと思いますね」

 ジャイアンツは70年代の堀内恒夫、80年代の西本聖、さらには槙原、斎藤雅樹、桑田真澄と伝統的に高卒の生え抜きが投手陣の中心を担ってきた。ところが、最近は大卒やFAで獲得した投手が多くなり、高卒2、3年目からローテーションに入るような投手は出現していなかった。当然、宮國には伝統的な『ジャイアンツのエース』に成長して欲しいという期待も高まる。

「高卒の生え抜き選手が活躍すると、ファンはその選手の成長を追いかけながら試合を見る楽しみができる。これは大卒やFAで獲得した選手にはない楽しみ方です」

 ファン目線での高卒投手の魅力を語ってくれた槙原氏だが、今後の宮國に期待することは何か?

「早い時期から、うまいだけの投手にはなってほしくないですね。今の宮國のピッチングは確かに完成度が高い。でも、今の年齢を考えると、コントロールやかけ引きだけでなく、ストレートでグイグイ押す、三振を狙いにいくような投球を見せてもいいのかなと思います。うまさは年齢を重ねてからでも身につけられる。時に荒々しいピッチングを見せてくれれば、ファンの期待はさらに膨らみますよ」

 久々に現れたジャイアンツの高卒エース候補。大きく育って欲しいと願っているのは首脳陣だけではないだろう。

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