【プロ野球】投高打低時代、チームの浮沈を握るのは『出来のいい2番打者』 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 ただ、稲葉から小谷野に代わっても栗山監督が2番に求めるものは変わらない。小谷野は一昨年に打点王を記録するなど、勝負強いバッティングに定評があるが、もともとは右打ちやベンチの意図を汲んだバッティングができる選手。実際、2009年には2番を経験して16犠打を記録しているし、今年のオープン戦でも2番の起用があった。栗山監督は「(小谷野)栄一は何でもできる選手。攻撃の幅を広げてくれる」と信頼を寄せている。

 バントをする、しないではなく、簡単にアウトをやらずに攻撃をつなげていく2番――今年の日本ハム打線における2番の役割は明確で、どのようにして点を取っていくのか、という答えをベンチと選手がぶれることなく共有できている。

 また、2番の起用から得点パターンが明確という点では、ソフトバンクやヤクルトもそうだ。ソフトバンクは昨年2番だった本多雄一を1番にして、新たに俊足の明石を2番に置いた。つまり昨年の川﨑宗則、本多と同様に足のある1、2番コンビを継承した形だ。ヤクルトも、ここ数試合は打順を組み替えているが、開幕で2番に起用したのは昨年のイースタンリーグ盗塁王の上田だった。

 2番に足のある選手を置くメリットは多い。まず、併殺打になるケースが少ないし、たとえ1番が凡退しても2番が出塁して足を生かせばチャンスは広がる。2003年に1番・今岡誠のあとに赤星憲広を置いてリーグ制覇を果たした阪神もこのパターンだった。盗塁をしなくてもバッテリーにプレッシャーをかけ、打者への配球にも影響を与えるなど効果は大きい。ソフトバンク、ヤクルトが理想とする攻撃は、2番に象徴されているといえる。

 その一方で、攻撃型2番として新外国人のボウカーを起用した巨人だったが、こちらは出足から躓(つまず)いた。巨人打線全体が不調だったとはいえ、2戦目から27打席ノーヒットと大ブレーキ。4月6日の阪神戦では、初回無死一塁の場面でベンチは送りバントを命じた。結果は成功だったが、これは本来、原監督がボウカーに求めた攻めではなく、ベンチの苦心、迷いを浮き彫りにしてしまった。そもそも、ボウカーはオープン戦も2番でスタートしたとはいえ、1番も6番も打ち、中盤からは3番での起用が多かった。そして開幕直前に再び2番に戻りシーズンに突入したが、本人もおそらく何を求められての2番か理解できていなかったのではないだろうか。言葉は悪いが、空いている打順の中から2番に据えただけ......の印象は拭えない。その後、ボウカーに代わり谷佳知を2番に起用し、ようやく巨人打線も「線」になりつつあるが、まだ「2番に何を求めるのか」という部分は明確に見えていない。

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