2012.04.01

【プロ野球】開幕戦、プロ初完投勝利。
斎藤佑樹が解いたひとつの封印

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

開幕戦でプロ初完投を飾った斎藤佑樹 2年目に懸ける、彼の決意を感じた。

 初めてとなる開幕戦のマウンドに立った斎藤佑樹は、ゆっくりと投球練習を始めた。もちろん、緊張感は十分に伝わってくる。ダルビッシュ有が抜けたファイターズにあって、3年連続で2ケタ勝利をマークしている武田勝を差し置き、去年、6勝6敗だった斎藤が開幕投手を務めるのだ。その重みは、いかに図太い斎藤といえども感じていただろう。

 そんな斎藤の想いを推し量っていたら、ふと、あることに気づいて仰天した。

 なんと、斎藤がプレートの三塁側を踏んで投げているではないか。

 もちろん、投球練習だけではない。ライオンズの1番バッター、エステバン・ヘルマンに対する初球。138キロのストレートを投げ込む斎藤の足元を確認すると、確かに三塁側を踏んでいる。

 これは、プロ2年目を迎えた斎藤が、いくつかの封印のうちのひとつを解いたことを意味していた。じつはこのオフ、斎藤がこんな話をしていたことがあった。

「1年目はずっとプレートの真ん中を踏んで投げてました。そこを変えると、よかったことと、悪かったことの理由がわかりにくくなります。だから、1年目はいくつかの引き出しは開けずにやってみたかったんです」

 大学時代、斎藤はさまざまな試行錯誤を続けていた。そのうちのひとつが、プレートのどこを踏んで投げるかということだった。3年春の早慶戦で、斎藤は慶大の左バッターに対して突如、プレートの一塁側を踏んで投げたことがあった。一塁側を踏んで左バッターのアウトコースへ投げ込む斎藤のストレートは、クロスファイヤーとは逆の対角線の軌道に乗って、遠くへ逃げていく。左バッターにしてみれば、いつもの斎藤が投げるボールをイメージして振ると、ボールはバットの先に当たってしまった。実際、慶大の左バッターは斎藤のアウトコースへの勝負球に対し、ことごとく左方向への打球で打ち取られていた。しかも斎藤は右バッターに対してはプレートの真ん中を踏み、左バッターが打席に入ると、またさり気なくプレートの一塁側を踏んで投げていた。すでに両校ともに優勝の可能性は消えた伝統の一戦で、斎藤は引き出しを増やすアプローチに取り組んでいたのだ。