【MLB】「本当に怪物なのか」苦闘する佐々木朗希に現地で広まる懸念 本人も「ずっと苦しい状態ではある」 (3ページ目)
【球速が上がっても捉えられるデータ的根拠】
しかし今、米球界では佐々木に対し、「本当に怪物なのか」という見方も徐々に広まりつつある。ヘルナンデス記者は言う。
「藤浪晋太郎タイプではないか、誰が佐々木を先発投手になれると思っているんだ、という声も出始めています。でもそれは、本来の佐々木朗希を知らないからなんです」。
問われているのは、怪物素材である佐々木をどう扱うのかというドジャースの姿勢だ。
千葉ロッテ最終年の2024年、佐々木は球速低下に悩んでいた。翌2025年にMLBへ移籍する際、自身を再生させてくれるチームとしてドジャースを選んだ。だが、メジャー1年目は故障もあり、10試合登板、8先発にとどまり、防御率は4.46。それでも、ブルペンが不安定だったチーム事情から一時的なリリーフ転向を受け入れると、ポストシーズンでは9試合に登板し、防御率0.84、3セーブと期待に応えた。その功績もあり、球団は今春のオープン戦で4試合、8回2/3を投げて防御率15.58と苦しんだ佐々木を、開幕ローテーションに入れた。
だが、開幕後も最初の4試合で5回まで投げたのは1度だけ。防御率は6.11だった。その後は3試合続けて5回以上を投げ、5月2日のカージナルス戦では初めてクオリティースタート(先発投手が6イニング以上を投げ、自責点3以下を記録すること)。改善していると見ることはできる。だが実情は、球速差をつけたスプリットやスライダーで打者をかわしながら、なんとか試合を作っている状態に近い。
MLBのデータサイト『ベースボール・サバント』を見ると、現状の佐々木の直球が置かれている状況がよくわかる。平均球速は97マイル(156.1キロ)台で、メジャーでもトップクラスだ。しかし、空振り率は14.7%にとどまり、被打率は.375、長打率は.672と厳しい数字が並ぶ。つまり、よい時の速球の"質"ではない。運悪くヒットになっているのではなく、打者にしっかり捉えられているのである。
空振りを取れる直球には、いわゆる"伸び"を示す縦変化量、IVBが重要になる。佐々木の直球は15.4インチ(39.1センチ)で、平均比ではマイナス0.7。対照的に、チームメートの救援左腕アレックス・ベシアは21.5インチ(54.6センチ)、平均比プラス5.5を記録している。ベシアの直球の平均球速は91.2マイル(146.7キロ)ながら、空振り率は24.6%。球速だけでは直球の威力を測れないことがわかる。佐々木の直球は、2025年の平均95.9マイル(154.3キロ)から、今季は97マイル台へ上がっている。だが、被打率は前年の.256から.375へ、長打率も.500から.672へ悪化した。
速くはなっている。だが、打者が差し込まれない。メジャーの打者には捉えられてしまう97マイルなのである。
そのことは、佐々木本人が一番わかっている。メジャーで理想とする投手像にどれだけ近づいているかを問われると、前述の通り、「ずっと苦しい状態ではある」と語った。単なる結果への不満ではない。もっと根本的な、自分の身体を思うように扱えない苦しみが、そこにはある。
つづく
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
3 / 3

