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最新データ&内野守備コーチの証言から読み解く、投手・大谷翔平の好成績を支える「ゴロ率」と「守備位置」の変化 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【大谷の「二刀流」はチーム全体での共同作業】

 では、大谷と山本由伸では、守備の考え方は変わるのか。そう聞くと、ウッドワードは「大きく変わります」と答えた。

「ふたりのデータはまったく違います。たとえば山本は、引っ張られる打球が多い。カーブは特に強く引っ張られます。スプリットはそこまでではありませんが、それでも引っ張られる傾向があります。そのため内野手には、球種ごとに細かいデータを渡しています。スプリット、スライダー、カーブ、シンカー、直球の内外、高低まで、すべてです。私はそれをリマインドする役割ですね。

 また、チーム守備練習も、その日の相手や先発投手に合わせています。たとえば山本が先発する日は、スプリットやカーブによる弱いゴロを想定し、ノックもあえて弱めに打つ。大谷の場合も、スライダーなら弱いゴロを想定します。一方で、直球主体の配球なら強い打球が来る可能性が高いため、ノックの打球速度も上げる。つまり、『どんな打球が来るか』を想定して練習しているのです」

 キムとフリーランド、若いふたりにとって教本となっているのが、守備の名手であり、37歳のベテランでもあるミゲル・ロハスだ。昨年、ムーキー・ベッツは右翼手から遊撃手へのコンバートに成功した。そのそばにいて、助言を続けたのがロハスだった。今季もまた、若い内野手たちを支える存在になっている。

「彼は技術、ハンドリング、肩、すべてが揃っています。そして何より優れているのは、予測力です。彼は打球が来る前に動き出しています。だからスピードが多少落ちても、多くの打球に追いつける。さらに、スイングを読む能力がある。球種的には引っ張られやすい場面でも、打者のスイングを見て逆方向だと判断すれば、そちらに動ける。経験によって培われた感覚ですね」(ウッドワードコーチ)

 大谷が完全二刀流でフルシーズンを乗りきれるのか、周囲が心配するのは当然のことだろう。だが、その一方で、大谷自身は投球の形を変え、少ない球数でアウトを重ねる方法を探っている。内野手たちは、その打球を確実にアウトに変えるため、試合前から細かい準備を重ねている。担当コーチたちは、投手ごと、球種ごと、打者ごとに来る打球を想定し、日々の練習に落とし込んでいる。

 二刀流を支えているのは、大谷ひとりの才能だけではない。それは、ドジャース全体で進める共同作業なのである。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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