大谷翔平が「二刀流」ではなく「投手専任」で起用された理由 ロバーツ監督と本人が語るその真意とは? (3ページ目)
【大谷のコメントから分析するその真意】
その一方で、大谷の言葉にはもうひとつの側面もあった。
登板日に打撃を行なわないことは、シーズンを通してスタミナを保つ助けになると思うか――。そう問われると、大谷は即座には肯定しなかった。「どうですかね」と前置きしたうえで、こう答えた。
「個人的には、どちらでも『いけ』と言われたほうでいきたい」。さらに、長いシーズンのなかでは、チームがほかの選手をDHで試したい場合もあるかもしれないとし、自身にとっても健康を保つうえで、そういう登板が「もしかしたらプラスかもわからない」と続けた。
ここには、明確な線引きがある。大谷は投手専任での起用を否定しているわけではない。チームの判断も尊重している。だが、それが自分から強く望んだアイデアだとも言っていない。「プラスになる」と断言しているわけでもない。「もしかしたら」と留保をつけ、「完全にチームに任せている」と語った。つまり、大谷の姿勢は「積極的な主張」というより、「チーム方針の受け入れ」に近い。
別の質問でも、大谷は同じ姿勢を崩さなかった。投げるだけの日があるなかで、シーズン全体を見据えて自分の状態を管理するのは容易かと問われると、「どちらでも僕的には大丈夫」としたうえで、「理想は全員がケガなく10月へ向かうことだ」と答えた。そして、そのための管理は「トレーナー陣を含め、チーム全体で話し合いながら進めるものだ」と説明した。ここでも主語は、「自分」ではなく「チーム」だった。
二刀流として結果を残してきた今でも、休養や投手専任をめぐる議論が起こることをどう受け止めているのか。そう問われても、大谷は「そこは特にはない」と言いきった。そして再び、こう語った。
「『いけ』と言われたときにいきたい」
この日の大谷の言葉には、ふたつのものが同居していた。ひとつは、チームの一員としての成熟である。打線の援護がなかった敗戦でも、責任を他者に向けず、自分の投球が試合の流れを作れなかったこととして語る姿勢。そこには、ドジャースの中心選手としての自覚があった。もうひとつは、二刀流の起用法に対する慎重な距離感である。大谷は不満を口にしているわけではない。だが、投手専念が自分の発案であり、自ら望んだ選択だとも言っていない。あくまでチームにまかせ、そのなかで最高の準備をする。そういう立場を保っていた。
後編につづく「最新データ&内野守備コーチの証言から読み解く、投手・大谷翔平の好成績を支える「ゴロ率」と「守備位置」の変化」
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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