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背番号21に刻まれた信念 ニカラグアで見たロベルト・クレメンテの遺産と野球への愛 (2ページ目)

  • 加藤潤●文 text by Kato Jun

 カロリナの球場では、藤浪晋太郎から野球選手としてのクレメンテについて説明を受けた。そしてポラス氏は、人間としてのクレメンテを定義した。どちらも申し分ないものだろう。

「私の今後の目標は、この国のすべてのスタジアムに21番を掲げることだ。そうあるべきなんだよ」

【背番号21が見守る新球場】

 じつはポラス氏の話を聞く前日に、彼の目標の一部がすでに達成されている球場を訪れていた。マナグアの南、約30kmに位置するマサヤ。この町に一昨年オープンした新球場、『ロベルト・クレメンテ・スタジアム』のスコアボード脇には、背番号21のユニフォームの絵が掲げられている。

 球場内の一角に小さなギャラリーが設けられており、そこにはクレメンテの遺品の一部と、彼の家族写真が展示されている。写真には、パイレーツのユニフォームを身にまとった3人の幼い息子と、その隣で笑顔を見せるクレメンテと妻のベラの姿が写っている。

 また、「我々は貴方の遺産の一部です」というメッセージとともに、尾の長いカワセミのようなニカラグアの国鳥、アオマユハチクイモドキが描かれている。

 この球場の見どころは、クレメンテにちなんだ内部だけではない。駐車場からの眺めはまさに圧巻で、まるで箱根の外輪山から芦ノ湖と中央火口丘を望むかのような大展望が広がっている。それも当然で、この球場はマサヤ火山のカルデラの縁に位置している。

 日本からは太平洋を挟んで遥か彼方に位置するニカラグアだが、環太平洋造山帯の一部を成している。つまり、日本と同じく地震と火山の多い地域だ。英語で「リング・オブ・ファイア」と呼ばれるとおり、この土地が自然災害と隣り合わせであることが実感できるだろう。この絶景を生み出した土地が、地震を引き起こし、クレメンテの命を奪ったというのは何とも皮肉なことだ。

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