パドレス松井裕樹はWBCで苦しんだボールにも対応 ダルビッシュ有は「言葉が見つからないくらい大きな存在」 (3ページ目)

  • 三尾圭●取材・文・写真 text & photo by Mio Kiyoshi

 春季キャンプ中にニエブラ投手コーチがボールへの適応に対して松井に尋ねた時も、「もう慣れたので問題ありません」と答え、その適応力の高さに感心していた。また、「彼のストレートはバックスピンがかかっているので、打者の手元で浮き上がる。メジャーでもとても特別なボールだ」と指摘するように、松井のフォーシームはMLB平均より2.6インチ(約6.6センチ)もホップする(浮き上がる)。これは今季、フォーシームを100球以上投げた234人の投手の中で11位にランクする。左腕に限定すれば、シカゴ・カブスの今永昇太に次ぐ3位のホップ成分の高さを誇る。

 日本ではストレートを高めに投げる機会は少なかったが、アッパースイングをする打者が多いMLBでは、浮き上がるようなフォーシームを高めに投げるのはとても効果的で、松井も高めへフォーシームを投げることが多い。そのフォーシームと同じフォーム、同じ軌道からフスプリットを投げることで、ストライクゾーンの高低を有効的に使い、打者を苦しめている。

「ユウキは伸びのある速球と、鋭く落ちるスプリットを投げるけど、あのコンビネーションはどこの国であっても通用する」(ニエブラ投手コーチ)

 今季は全投球の35.2%がスプリットというほど多投しているが、それだけ投げていても被打率は.160、空振り率は39.2%とほとんど打たれていない。特に右打者に対してスプリットを投げることが多く、左打者に対しては同じ落ちる球でもスプリットではなく、スライダーで仕留めている。松井の代名詞でもある縦スライダーは脅威の空振り率53.3%を記録する。

 そして、メジャーに来てから投げ始めた球種として、横に大きく曲がるスライダー、ここ数年MLBでトレンドとなっている「スイーパー」を取り入れた。

「日本では横のスライダーは使っていないです。(MLBでは」選択肢が多いほうがいいので」

 松井のスイーパーは横に16.6インチ(約42.2センチ)も曲がり、MLBでもトップクラスの曲がり幅を誇る。

「スイーパーは打たれてもポップフライになり、空振りを奪えるスライダーはバットに当たってもゴロになる。相手打者の傾向を考えながら、このふたつの球種を投げ分けるように指示している」(ニエブラ投手コーチ)

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