大谷と菊池メジャー初対決で明暗。高校は同じも似て非なる育成だった (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

 先に巣立った菊池もまた、佐々木監督からの『岩手の中学生、高校生がプロを身近に感じられるよう、これからはお前が特別な存在であり続けてくれ』という言葉を励みに、大谷に先んじて日本で戦ってきた。菊池はその言葉をこう解釈している。

「結果だけじゃなくて、練習でも一番でなくちゃいけない」

 菊池が日米の球団から高い評価を受けたことで、岩手からもメジャーへ道がつながっていることを示した。その事実が先入観を打ち破り、当時、岩手の中学生だった大谷の価値観を育んだ。そう考えると、菊池雄星と大谷翔平は、やはり花巻東の佐々木洋監督が育てた"兄弟"なのだ。

 長男の菊池、次男の大谷――まさにキャラクターもそのイメージどおり、男気に溢れていて責任感の強い長男と、やんちゃで奔放な、要領のいい次男。打たれた長男は、"兄弟"が同じグラウンドに立ったことについて訊かれ、こう話した。

「投げることに必死というか、まだそういうことを考えられる立場でもないですし、個人的な部分で言えば、自分自身がレベルアップした先に、そういうもの(対決)を楽しめるときがくればいいなと思っています」

 打った次男は、こう言った。

「(ふたりの対決は)僕よりも(花巻東の)監督、コーチの方が楽しみにしている部分があったのかなと思うので、ホームランを打った、打たないとか、抑えられた、抑えられなかったというところではなくて、この舞台で対戦することができたというがすごく大きいんじゃないかなと思います」

 岩手県花巻市は、『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』を生んだ宮沢賢治の故郷として知られる"イーハトーブ"の里である。イーハトーブとは宮沢賢治の作品に登場する心象世界のなかの理想郷で、そのモチーフは岩手ではないかと言われている。

 菊池雄星と大谷翔平──イーハトーブの里が育んだ、同じ"野球遺伝子"を持つ2つの才能は、まず、アナハイムで交錯した。メジャーでの次の"兄弟"対決はオールスター明け、1カ月後にふたたび巡ってくる。

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