13年370億円。ブライス・ハーパーは過大評価の声を覆せるか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 26歳という若さを考えても、今オフにフィリーズから13年3億3000万ドル(約367億7000万円)というとてつもない契約を"受け取った"ことは、ある程度は理解できる。同じ高卒全体1位指名選手のケン・グリフィー・ジュニア、アレックス・ロドリゲスと同じように、偉大なキャリアを築いていくのかもしれない。

 ただ、ハーパーは"アンチ"が少なくない選手でもある。ニューヨークでのメッツ戦でも打席に立つたびにブーイングが飛び、地元ファンから「過大評価だ(Oveerated!)」の大合唱が沸き起こっていた。もちろん敵地でのブーイングはリスペクトの証明でもあるのだが、特筆すべきは、ハーパーが「過大評価されている」と考えているのはファンだけではないことだ。

 アメリカのスポーツ専門サイト『The Athletic』が5月下旬に発表した、選手間投票の「もっとも過大評価されている選手は?」という項目で、ハーパーは62%の得票を集めて1位だった。2位のマーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)の得票率はわずか4.1%だったのだから、ハーパーはまさにダントツの"支持率"を誇ったことになる。

 巨額契約を受け取ったことに対する嫉妬があるにしても、同投票では昨季も48.6%の得票を集めてトップだったことは無視できない。そして、今年の記事に寄せられた匿名選手のこんなコメントも見逃せない。

「マーケティングの力とスター性はわかるけど、(大活躍した)1年以外に彼はいったい何をやったというんだ?」

 実際に、2015年こそ完全開花を感じさせるシーズンを過ごしたハーパーだが、打率3割を超えたのはこの年と2017年だけ。ケガも多く、メジャーでの7年間で年間140試合以上プレーしたのは3シーズンのみだ。

 ここ4年間は毎年三振率が高まっているというデータもあり、適応能力を疑う声は徐々に増えている。そこに気性の激しさ、精神的な不安定さまで加われば、13年契約に疑問を呈する関係者が出てくるのは当然だろう。「ハーパーは本当に長期契約の価値がある選手なのか」と。

「あんなことをしてはいけなかった。地区ライバルのメッツとの対戦ではなおさらだ。このチームは僕が打線に名を連ねたほうがよりいいチームになるのだから、そこにいなければいけなかった」

 今回の一件の直後にハーパーはそう述べ、素直に自身の非を認めていた。そんな姿勢は評価できるし、今後に期待も持てる。チームの顔にはリーダーシップも求められるだけに、献身的な姿を継続的に見せていくことに意味はある。

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