イチローに批判的だった元マーリンズ社長を、大ファンに変えた3年間 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 そう辛辣(しんらつ)な言葉を並べていたサムソン氏だが、イチローと過ごした3年間が彼の見方を大きく変えたのだ。

「イチローは毎日、常にプレーする準備が整っていました。4打席だろうが、1打席だろうが、9イニングであろうが、3球であろうが......どんな状況であっても、準備する姿勢に変わりはありませんでした。このことは、野球界において非常に稀だと思います。与えられる役割に対して、多くの選手が準備をしているわけではありません。でもイチローは、キャンプ初日だろうが、開幕日だろうが、シーズン中の150試合目だろうが、いつも変わらず準備をしていました。彼にとっては、毎日がチャンピオンシップだったのです。イチローはマーリンズの選手たちに、いかなるときも準備することの大切さを教えてくれたのです」

 今シーズン、イチローは4、5月こそ本調子ではなかったが、5月末以降は135打席で41本のヒットを放ち、打率.304、出塁率.369という好成績を残した。サムソン氏が言うように、この成績を真っ向から否定するチームなどあるはずがない。

 問題はイチローのパフォーマンスではなく、球界の選手寿命に対する固定観念である。そのことに対して、サムソン氏はこう力説する。

「チームにとって、確実に殿堂入りするスーパースターと契約を結ぶのは大変なことなのです。なぜなら、もしその選手が活躍しなければトレード、もしくは解雇しなければなりません。でも、それは簡単なことではありません。『スーパースターを解雇した球団』と思われたくないですから......。それはチームにとってものすごくマイナスとなってしまうわけです」

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