マネーボールはもう古い?低予算アスレチックスの新戦略 (4ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 アスレチックスのメンバーを見てみると、準レギュラーの選手が非常に多い。レギュラーと言えるのは、サードのジョシュ・ドナルドソン、ショートのジェド・ラウリー、レフトのヨエニス・セスペデスの3人ぐらいでしょう。キャッチャーは左打ちのジョン・ジェイソ(以下、左)と、右打ちのデレク・ノリス(以下、右)。ファーストはブランドン・モス(左)と、カイル・ブランクス(右)と、スイッチヒッターのアルベルト・カヤスポ(以下、両)。セカンドはエリック・ソガード(左)と、ニック・プント(両)。センターはココ・クリスプ(両)と、クレイグ・ジェントリー(右)。そしてライトはジョシュ・レディック(左)と、センターのジェントリー(右)が交互に起用されています。

 このように、あらゆるポジションでプラトーンを採用しているので、オールスターのファン投票では三塁手のドナルドソンがランクインしているぐらいです。さらに、今年のアスレチックスはルーキーがひとりもおらず、生え抜きはわずか3人。こんなにもスター選手が在籍せず、なおかつ他球団から選手をかき集めて勝ち続けているのですから、実に驚きのチームです。

「アスレチックス=マネーボール」と言われ、セイバーメトリクスの指標ばかりがクローズアップされてきました。もちろん、現在もデータを生かした野球は取り入れていますが、それよりも今は、このプラトーンシステムこそ、最先端の「勝てる戦略」なのです。アスレチックスの成功によって、最近ではレイズが似たようなシステムを取り入れて成功しています。今年はケガ人続出で最下位に苦しんでいますが、レイズは近年、常に90勝前後の成績を残しています。また、ヤンキースもイチロー選手の起用法を見ていると、アスレチックスの手法を取り入れようとしているのでしょう。ただ、アスレチックスの徹底ぶりは抜きん出ていると思います。

 オールスター選手はいないが、間違いなく強い――。今、最も面白いアスレチックスの野球に、ぜひ注目してください。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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