メジャーリーグ2013。ひっそりと引退していった男たち (4ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 通算203勝は、かつて殿堂入りの基準とされていた300勝には遠く及びません。ただ、21世紀に入ってメジャー最高の投手のひとりと称されるハラデイは、間違いなく殿堂入りを果たすでしょう。もし殿堂入りすれば、先発投手では1960年代に3度の「投手三冠」に輝いたロサンゼルス・ドジャースのサンディー・コーファックス(165勝87敗)に次ぐ少ない勝ち星での選出となります。

 そしてもうひとり、今年引退したピッチャーで紹介したいのは、2000年代前半にシカゴ・カブスで活躍したマーク・プライアー(33歳)です。2001年、名門USC(南カリフォルニア大学)からドラフト1巡目全体2位で入団したプライアーは、2003年にはリーグ2位となる18勝をマーク。「ノーラン・ライアン2世」と呼ばれたケリー・ウッドとの2枚看板で、カブスの地区優勝に大きく貢献しました。

 当時、プライアーの剛速球はメジャー随一と称されていました。USCの先輩でもあるトム・シーバー(1967年〜1986年/ニューヨーク・メッツなど)の再来と言われ、将来を嘱望された若手ピッチャーだったのです。しかし、肩を酷使したことが影響し、2004年以降は度重なるケガに悩まされました。そして2006年を最後にメジャーのマウンドから遠ざかり、その後、再起を図るも、復帰の夢を叶えることはできませんでした。

 年齢的には、まだ33歳。若かっただけに非常に残念です。肩さえ故障しなければ、通算200勝ぐらい残しても不思議ではないピッチャーだったと思います。まさにひっそりと引退しただけに、とても印象に残りました。

 マリアノ・リベラやアンディ・ペティットのように名門ヤンキースから華々しく引退する選手がいる一方、プライアーのような球界の去り方をする選手も数多くいます。名前を挙げるとキリがないのですが、メジャーを彩った彼らの存在を忘れてほしくないと思います。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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