メジャーのトレードに学ぶ「将来性の値段」 (3ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Noko
  • photo by Getty Images

 その年、オリオールズで最も安定感のある中継ぎだった上原は、43試合を投げて防御率1.72という好成績だった。レンジャーズ移籍直後は調子にムラが見られたが、9月の声を聞くと安定し、プレイオフ進出の後押しをした。チームはといえば、世界一には一歩及ばず。上原自身は、翌2012年の前半をケガで棒に振るが、復帰後は大車輪の活躍で、37試合を投げて防御率1.75で締めくくった。そして今季はFA移籍したレッドソックスで守護神として、チームを勢いづかせている。

 気になるのは、上原の対価としてオリオールズへ移籍した選手だ。実は、現在ア・リーグ本塁打王のクリス・デービス(同25歳)と、中継ぎで活躍するトミー・ハンター(同25歳)のふたりだった。現時点での位置づけを見ると、一方は守護神で、もう一方は本塁打王+中継ぎとほぼ互角だが、トレードで移籍したチームへの貢献度を考えてみると、オリオールズに軍配が上がったと言わざるを得ない。若手ふたりの将来性を見抜いた、見事なトレードだった。

 ちなみに、テキサスの地元記者に言わせると、クリス・デービスが見せる今季の快進撃は「何の不思議もない」そうだ。以前からパワーはあったが、そのパワーの使い方を知らなかっただけだという。

 その他、昨季7月27日に行なわれたブルワーズのザック・グリンキー(同28歳)とエンゼルスのジーン・セグラ(同22歳)と他2選手の交換トレードや、2010年7月25日に行なわれたエンゼルスのパトリック・コルビン(同21歳)、ジョー・ソーンダース(同29歳)+2選手と、ダイヤモンドバックスのダン・ハレン(同29歳)という交換トレードなど、トレードの妙を探してみると多数例がある。

 実力派の若手選手が出現したら、生え抜きか他球団から獲得したのか、まずチェックしてみよう。そこからも、各球団首脳陣の腕利き具合が分かるはずだ。

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