パイレーツ大躍進の秘密は「イタリア代表クローザー」にあり

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

36歳でようやく自分のポジションをつかんだパイレーツのジェイソン・グリーリ36歳でようやく自分のポジションをつかんだパイレーツのジェイソン・グリーリ【2013年メジャーリーグ前半戦総括@ナ・リーグ編】

 今シーズン前半戦のメジャーリーグを振り返る上で、最も欠かせない出来事といえば、間違いなくピッツバーグ・パイレーツの快進撃でしょう。開幕からスタートダッシュに成功し、両リーグを通じて50勝一番乗り。これは、1960年のワールドシリーズでパイレーツがニューヨーク・ヤンキースを下して世界一に輝いた年以来の出来事です。7月9日現在、パイレーツの成績は53勝35敗。首位セントルイス・カージナルスと0.5ゲーム差で、ナ・リーグ中地区2位のポジションをキープしています。パイレーツが前半戦でここまでの貯金を稼ぐとは、誰も想像しなかったのではないでしょうか。

 たしかに昨年のパイレーツの勝率は、例年と比べれば悪くありませんでした(79勝83敗)。しかし9月に7勝21敗と大失速し、アメリカプロスポーツ史上初となる「20年連続負け越し」という不名誉な記録を作ってしまいました。ところが今年は、162試合のちょうど半分の81試合を終えた段階で、21もの貯金をマーク。162試合制になった1962年以降、述べ57チームが「貯金21以上」で81試合目を折り返しましたが、それだけの貯金を稼いで最終的に勝ち越せなかったチームは、過去に一度もありません。よって、よほどのことがない限りパイレーツは、今年ついに不名誉な記録から脱し、悲願の「勝率5割以上」を達成するでしょう。

 パイレーツの快進撃を支えているのは、現在メジャー1位の防御率(3.15)を誇る投手陣です。昨年ヤンキースから移籍してきたエースのA.J.バーネット(4勝6敗・防御率3.05)を軸に、25歳の新鋭左腕ジェフ・ロック(8勝2敗・防御率2.15)と、今年加入したドミニカ共和国出身のフランシスコ・リリアーノ(8勝3敗・防御率2.20)が大躍進。安定したピッチングを披露し、順調に勝ち星を積み重ねています。さらに注目すべき選手は、クローザーのジェイソン・グリーリでしょう。これまで一度もクローザーの経験がなく、過去6球団を渡り歩いてきたイタリア系メジャーリーガーです。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にもイタリア代表のメンバーとして名を連ねていましたが、それほど目立った選手ではありませんでした。しかし36歳になって、ついに自分のポジションを確立したのです。現在、ナ・リーグ1位の28セーブ(0勝1敗・防御率2.15)を記録し、パイレーツの新守護神として大ブレイク。グリーリの活躍なくして、パイレーツの快進撃はなかったと言ってもいいでしょう。

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