【MLB】作家、ハンター、カーレーサー。メジャーリーガーの「オフは別の顔」 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 また、チャリティーやボランティアを積極的に行なうメジャーリーガーも、オフの時期に数多く報道されています。バド・セリグ・コミッショナーから国際親善大使に任命されたヤンキースのカーティス・グランダーソンは、野球の普及のために世界各地を訪問。昨年12月には東日本大震災の被災地、宮城県石巻市を訪れ、集まった小学生に野球教室を行ないました。

 米軍基地を回って兵士やその家族を慰問するボランティアも、アメリカでは人気です。かつては、メジャー通算354勝のロジャー・クレメンスが積極的に動き回っていました。現在、最も盛んに慰問を行なっている選手は、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに所属するブラッド・ジーグラーという下手投げのピッチャーです。野球の観戦チケットを兵士にプレゼントするなど、社会貢献に積極的な選手が多いことも、メジャーリーグの良い風習ではないでしょうか。

 さらに『変わり種』なシーズンオフを送っているメジャーリーガーと言えば、昨年サイ・ヤング賞を受賞したナックルボーラーのR.A.ディッキー(トロント・ブルージェイズ)でしょう。昨年1月、インドの少女売春撲滅を目指す慈善団体の募金活動を支えるため、ディッキーはキリマンジャロへの登山を敢行。さらに、テネシー大学時代に英文学を専攻していたディッキーは昨年3月に自叙伝を出版し、作家デビューを果たしました。

 音楽の分野では、シンシナティ・レッズの先発投手ブロンソン・アローヨと、シカゴ・ホワイトソックスの元サイ・ヤング賞投手ジェイク・ピービー、このふたりが有名です。アローヨはすでにCDデビューしていますし、ギタリストとして活躍しているピービーはチャリティーライブを頻繁に行なっています。

 一方、シーズンオフになると、大学に通う選手もいます。意外かもしれませんが、大学を卒業しているメジャーリーガーは少なく、今年、4年生大学を卒業した新人もわずか39人。その割合は、今年契約した新人全体の5%未満なのです。卒業していない理由は、多くの選手が大学3年時にドラフトの対象となり、中退してプロ入りするからです。しかし、前述のグランダーソンはオフにイリノイ大学の学位を取得し、ワシントン・ナショナルズのドリュー・ストーレンというリリーフ投手も母校のスタンフォード大学に通って見事卒業しました。また、名門プリンストン大学を卒業したナショナルズのロス・オーレンドルフは「球界ナンバー1の秀才」との評判で、その才能を生かして父が所有する牧場経営にも携わり、サイドビジネスにも手を広げています。

 そして最後の『変わり種選手』は、ロサンゼルス・エンゼルスの先発左腕C.J.ウィルソンです。マツダがスポンサードするレーシングチームを所有しているウィルソンは、オフにカーレーサーとしても活動しています。しかし近年は球団との契約内容が細かくなったため、危険を伴う行動は禁止されるようになりました。よって、本格的なレースへの参加は許されてないようです。昔はボー・ジャクソンやディオン・サンダースのように、MLBのシーズンが終わるとNFLに参加する「二足のわらじプレイヤー」が存在しました。しかし今は、時代が許さなくなっているのでしょう。さみしい限りですが、球団も高額な年俸を払っているだけに仕方ありません。

 このように今回は、選手のさまざまな『オフの顔』を紹介してきました。バラエティに富んだ趣味を見るだけでも楽しめるのが、メジャーリーグの魅力だと思います。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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