【MLB】楽天入りするA・ジョーンズは、こんなにスゴい奴

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

ブレーブス時代に数々の記録を打ち立てたアンドリュー・ジョーンズ。来季、ヤンキースから楽天へブレーブス時代に数々の記録を打ち立てたアンドリュー・ジョーンズ。来季、ヤンキースから楽天へ 東北楽天ゴールデンイーグルスが、今シーズンまでニューヨーク・ヤンキースでプレイしていたアンドリュー・ジョーンズと、総額3億円で単年契約しました。「メジャー通算434本塁打のスラッガー」として注目されていますが、A・ジョーンズの魅力はバッティングだけではありません。そこで今回は、話題となっているA・ジョーンズについて紹介したいと思います。

 A・ジョーンズは1977年、カリブ海に浮かぶオランダ領アンティルのキュラソー島で生まれました。キュラソー島は、人口わずか17万5000人ほどの小さな島です。しかしこの島には、複数のメジャーリーガーを輩出してきた歴史があります。千葉ロッテやヤクルトでプレイしたミューレンや、日本で2年連続本塁打王に輝いているバレンティン(ヤクルト)も、キュラソー島の出身。そして、その中で最も成功を収めた選手が、今回紹介するA・ジョーンズです。

 1993年、当時16歳でアトランタ・ブレーブスに入団したA・ジョーンズは、プロ入り当初から抜きん出た才能をいかんなく発揮しました。1994年、1995年と、アメリカ随一の野球専門誌『ベースボール・アメリカ』選出による『マイナーリーグ最優秀選手』を、2年連続で受賞。この活躍により、A・ジョーンズは一躍、全米注目の的となったのです。

 そしてプロ入りから3年後の1996年、シングルAからスタートしたA・ジョーンズは、ダブルA、トリプルAとトントン拍子に昇格し、同年8月、ついにメジャーデビューを果たします。1996年という年は、野茂英雄投手(当時ロサンゼルス・ドジャース)メジャー2年目のシーズンで、日本でメジャーリーグの人気が沸騰していた時期です。当時、僕はNHK・BSのメジャーリーグ中継で解説をやっていて、テレビで何度も「A・ジョーンズというすごい選手がいるんです」と、マイナー時代から知っていた彼を話題にしていました。振り返ると、懐かしい思い出です。

 そんな折、衝撃的な出来事が起きました。1996年、ブレーブス対ヤンキースのワールドシリーズ第1戦。場所は、敵地ヤンキースタジアム。なんと当時19歳6ヵ月のA・ジョーンズが、初打席でいきなり先発のアンディ・ペティットからホームランを放ち、ミッキー・マントルの持つ『ワールドシリーズ最年少本塁打記録』を塗り替えたのです。さらにA・ジョーンズは、第2打席でもホームランを連発。史上ふたり目となる『ワールドシリーズ初打席から2打席連続本塁打』という大記録も打ち立て、全米中が「ニューヒーローの出現!」と沸き立ったのです。

 1990年代、『走・攻・守』を兼ね備えたメジャー最高のプレイヤーといえば、誰もが「ケン・グリフィー・ジュニア(当時シアトル・マリナーズ)」のことを指していました。しかし、バッティングのみならず、スピードもあり、さらに高い守備力を披露するA・ジョーンズが、1990年後半に突如、現れたのです。そんなニュースターの登場により、A・ジョーンズは「ケン・グリフィーに匹敵する存在」と呼ばれるようにもなりました。

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プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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