【MLB】野茂英雄のライバル。今年引退するチッパー・ジョーンズを振り返る (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 また、1999年シーズンも忘れることができません。チッパーが史上初めて『打率3割・40二塁打・40本塁打・100フォアボール・20盗塁』をマークし、リーグ優勝にも貢献。さらにナ・リーグMVPにも選ばれたシーズンです。長い野球人生を振り返ると、1999年が彼の転換期だったと思います。

 それは、チッパーが右打席でパワーを発揮したからです。それまでの4年間、チッパーは右打席で合計12本塁打しか打っておらず、長打は左打席ばかりでした。しかしその年の夏、ブレーブスの打撃コーチを務めていたドン・ベイラー(コロラド・ロッキーズ初代監督で、現在はアリゾナ・ダイヤモンドバックスの打撃コーチ)に、「もっと右打席でもアグレッシブに打て!」とアドバイスされたことで、チッパーは変貌を遂げたと言われています。

 結果的に1999年は右打席でホームランを15本も打ち、左打席と合わせて自己最多となる45本塁打を記録しました。これをキッカケに、チッパーは本物の『強打のスイッチヒッター』になったと思います。現在、通算467本塁打は、ミッキー・マントルの536本、エディ・マレーの504本に次ぐ、スイッチヒッター歴代3位の記録です。また、マイク・シュミットとジョージ・ブレットの持つ1595打点を抜いて、三塁手最多となる1615打点もマークしています。比較される選手は、いずれもメジャー史に刻まれた強打者ばかり。まさにチッパーは、球史に残るスイッチヒッター、三塁手と言えるでしょう。

 将来の殿堂入りは間違いありません。数年後には、本拠地ターナーフィールドのレフト後方に並ぶ永久欠番に、彼の背番号『10』も飾られることでしょう。ブレーブスの黄金時代を支え、11度も地区優勝に貢献したチッパーの功績に匹敵する現役選手は、デレク・ジーター(ニューヨーク・ヤンキース)ぐらいではないでしょうか。残りシーズンも少なくなってきましたが、ぜひとも彼の最後の勇姿を、しっかりと目に焼き付けてください。

※記録は8月23日現在

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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