【MLB】野茂英雄のライバル。今年引退するチッパー・ジョーンズを振り返る (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

※2012年の成績は、80試合・89安打・13本塁打・54打点・打率.310・OPS.904(8月23日現在)※2012年の成績は、80試合・89安打・13本塁打・54打点・打率.310・OPS.904(8月23日現在) ただ、チッパーはこの年、野茂投手も最後まで掴めなかったモノを手に入れました。そう、『ワールドチャンピオン』という栄光です。ブレーブスにとっても1966年に本拠地を移転して以来、初の世界一だったので、『ミッキー・マントルの再来』と呼ばれていたチッパーは、早くもアトランタのアイドルとなりました。

 ちょうど運良く、僕もNHKの仕事で、このワールドシリーズを生で観戦していました。そのとき初めてチッパーを目の前で見たのですが、身体の線はまだ細かった印象です。当時のブレーブスは、両リーグで本塁打王に輝いたフレッド・マグリフが4番、そして1990年の新人王デービッド・ジャスティスが5番にいたので、23歳のチッパーが初々しく見えたのを覚えています。

 しかし1996年は、その両者を凌駕する活躍を見せました。チッパーは球団史上11年ぶりとなる『打率3割・30本塁打・100打点・100得点』をマークし、オールスターにも初選出。ナ・リーグの三塁手としてスタメン出場も果たしました。ただ、ライバル・野茂投手との対決では大苦戦。ブレーブスも野茂投手に防御率1.53と、完全に押さえ込まれるほど苦手としていました。

 そんな状況のなか、チッパーはプレイオフで再び、野茂投手と対戦することになります。ブレーブスが2連勝し、リーグチャンピオンシップ進出に王手をかけたディビジョンシリーズ第3戦。チッパーは先発の野茂投手から第1打席でヒットを打つと、第2打席はフォアボールで出塁し、そして第3打席でセンターオーバーのツーランホームランを放ったのです。このホームランによって、野茂投手はそのシーズン最短となる4回途中5失点でマウンドから下ろされてしまいました。結果、ブレーブスはリーグチャンピオンシップに進出。チッパーがライバルの野茂投手を乗り越えたこの瞬間が、数ある両者の対決のなかで、個人的に一番思い出深いシーンです。

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