【MLB】レイズが今、松井秀喜を欲しがった3つの理由 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 レイズの本拠地トロピカーナ・フィールドのあるフロリダ州セントピーターズバーグは、昔からヤンキース人気の高い地域です。なぜかというと、ヤンキースが1925年から1961年まで、毎年のようにこの土地でキャンプを張っていたからです。当時のヤンキースは、ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグらが活躍した『第1期黄金時代』から『第3期黄金時代』にかけての最も強かった時代。よって今でも、根強い人気があるのです。

 そんな背景もあってレイズには、ヤンキースで活躍したベテラン選手を獲得してきた流れがあります。ウェイド・ボッグスやティノ・マルティネス、ジョニー・デイモンなどが、レイズのユニフォームに袖を通しました。セントピーターズバーグ周辺に住む市民は、きっと2009年のワールドシリーズでMVPに輝いた松井選手の活躍ぶりも鮮明に覚えていることでしょう。そういう面からも、レイズにとって松井選手は魅力的に映ったと考えられます。

 松井選手がレイズとマイナー契約し、メジャーに昇格すれば、出場機会は少なくないと思います。その理由は、マドン監督がベンチ入り25人のメンバー全員を使う戦い方をするからです。マドン監督の采配の特徴は、『日替わり打線』。レギュラーシーズン162試合のうち、平均で127通りのラインナップを組んできました。他球団より劣る戦力を最大限に生かすための苦肉の策でもあるのですが、マドン監督はその采配で、97勝(2008年)、84勝(2009年)、96勝(2010年)、91勝(2011年)と、数多くの勝ち星を積み重ねています。

 また、マドン監督は代打を積極的に起用することでも有名です。代打の起用回数は、4年連続でア・リーグ1位を記録しています。相手ピッチャーに応じて打順を入れ替え、スタメンも頻繁に変更し、代打も多用するので、松井選手の出場機会は十分にあるのではないでしょうか。

 前述したとおり、レイズは守りを重視するチームなので、松井選手が外野で起用される可能性は低いと思いますが、DHや代打では貴重な戦力となるはずです。今シーズン、DHで起用されているルーク・スコットは打率が低く、左投手との相性が良くありません。その点、松井選手は対左投手の通算打率も高いので、調子次第ではDHのポジションを奪う可能性も十分ありえます。2012年5月、松井秀喜選手の今シーズンがついに幕を開けそうです。メジャー10年目、レイズのユニフォーム姿が今から楽しみです。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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