【MLB】ユーティリティプレイヤー・川崎宗則がマウンドに立つ日

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

イチローもうらやむ『ピッチャー・川崎宗則』が誕生する可能性も?イチローもうらやむ『ピッチャー・川崎宗則』が誕生する可能性も? メジャーが開幕して10試合ほど消化し、徐々に各チームの戦力バランスが見えてきました。各球団のロースターを見渡すと、マイナーからメジャーの切符を獲得した選手の多くが、シアトル・マリナーズの川崎宗則選手と同じく、『ユーティリティプレイヤー』という立場です。それだけ、彼らの重要性は高まっているのでしょう。

 開幕から8月末まで、各球団は25人のロースターで戦わなければなりません。そのうち、近年は分業制や球数制限もあって投手に12人ほど割り当てられるので、野手のベンチ入りはさらに絞り込まれます。しかも日本と違い、メジャーの試合は勝負の決着がつくまで終わりません。よって監督としては、ひとりで複数のポジションを守れるユーティリティプレイヤーの存在が絶対に欠かせないのです。

 現在、川崎選手もユーティリティプレイヤーとして、チームにいい刺激を与えているようですが、かつて同じマリナーズには、「これぞユーティリティプレイヤー!」という選手がいました。それは、マーク・マクレモアという選手で、1986年から2004年までメジャーに19年間在籍していました。マイナー時代は二塁手で、巨人の名ショートだった広岡達朗さんが、マクレモアの守備を見て絶賛したのを覚えています。

 残念ながらマクレモアはなかなかレギュラーに定着できず、チームを転々としました。しかし2000年、マリナーズでようやくレギュラーの座を射止めます。ところが翌年、ブレット・ブーンが移籍してきたため、マクレモアは再び控えに回されてしまいました。

 そこで当時、マリナーズを率いていた闘将ルー・ピネラは、あることを閃(ひらめ)きます。マクレモアを本職のセカンド以外にもサードやショートで出場させ、さらには外野のレフト、センター、ライトでも起用し、そして時にはDHでも試合に使ったのです。その結果、マクレモアは定位置を与えられなかったにもかかわらず、125試合に出場して409打数で117安打を放ち、なんと39盗塁をマーク。ユーティリティプレイヤーながら、立派なレギュラークラス級の活躍を見せたのでした。

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