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【MLB】高橋尚成、巨人時代と変わらぬスタイルでつかんだ自信と信頼 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • 朝倉宏二●写真 photo by Asakura Koji

「まったくないですね。(笑)何も変わらなかったですね。逆に僕はそれで良かったと思っています。日本で10年間プレイしてきて、自分のスタイルをようやく確立してこっちに来たんです。アジャストするために何かを変えるではなく、何も変えずにアジャストしていく。そこを根本的に考えながらやってきました」

 高橋は巨人時代からとても体の強い投手であると聞いていた。それでも体の強さならば野茂英雄や松坂大輔こそ特筆すべき存在だった。その彼らでさえメジャーの環境では体が悲鳴をあげ、投球フォームの変更を余儀なくされた。しかし、高橋は一度たりとも変えることはなかったのだ。

「日本時代になかった体の張りが出たら、そこを鍛えればいいと考えました。10年かけてようやく確立できたものを、この2、3年で変えて再び確立できるのか。僕はできないと思いました。ボールに関しても、滑るからとか、縫い目が高いとかではなく、『日本のボールと変わりなく使いこなせるんだ』と頭を整理し、何も変わらないと思って投げることが大事だと思っていました」

 メジャーでの2年間、安定した成績を残している高橋だが、1年目は招待選手からのスタートだった。しかし、「これが僕には良かった」と言う。今シーズン、マリナーズの川﨑宗則も招待選手から開幕ロースターを勝ち取り、少し遡(さかのぼ)れば06年の斎藤隆も同様だった。厳しいサバイバルではあるが、こうした立場も悪くないと語る。

「失うものは何もないんだと思ってやっていましたから、あえてスタイルを変える必要はなかった。今年メジャーに来たダルビッシュや岩隈(久志)くん、和田(毅)くんたちは注目されているし、いろいろなものを背負っていると思う。僕とは違いますよね」

 そして高橋は彼らに、「純粋に楽しんでと言っても難しいかもしれないですが、野球は楽しいものだということだけは忘れないでほしい」とエールを送る。

「何があったって別に命を取られるわけじゃないんだから」

 このおおらかさが、異国での高橋を支えているのだと感じた。

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