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【夏の甲子園2025】SNS、甲子園も騒がせる開星・野々村直通監督が語った引き際「グラウンドで死ぬなんてダメ」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【73歳、引き際をどう考える?】

 最後にどうしても確認しておきたかった。野々村監督は、これからの「引き際」をどのように考えているのか。60歳になった2011年に一度は勇退し、「気持ちが切れた」とも明かしている。甲子園初戦の試合後には、73歳にしてユニホームを着続ける苦しみを吐露していた。

 野々村監督が今夏を"花道"と考えている可能性は十分に考えられた。失礼を承知で質問すると、野々村監督はしみじみと噛みしめるように答えた。

「引き際......。一度は引いたんだけどね。(14年前に)最高の幕引きをしてくれて。僕は(2020年に監督に復帰して)いい野球部にしよう、応援してもらえる学生を育てよう、ということだけを考えていました。それで、実際にそうなったしね......」

 引退宣言でも飛び出しかねない流れだったが、ここからトーンが変わった。

「でも、地元の子(中学生)に声をかけるじゃないですか。親は『野々村先生が3年間見てくれ』と言うわけですよ。それで監督をやめたら、詐欺になるでしょ? 親と子どもに対する。もし倒れでもしたら、親もあきらめてくれると思うけど」

 ということは、最後はグラウンドで倒れるまで......。そう聞きかけたところで、野々村監督は「それはダメ!」と言葉を被せてきた。

「みんな忘れてるけど、僕はアーティストだから。野球は素人。グラウンドで死ぬなんてダメ。最後はキャンバスに筆を置きながら死にたい」

"やくざ監督"でもあり、"山陰のピカソ"の異名を誇るアーティストでもある。もともとは美術科教諭で、現在は松江市で「にがお絵&ギャラリーののむら」を開設している。昨秋には石見神楽を描いた油彩画が、全国公募展の極美展で最上位から5番目に相当する文部科学大臣賞を受賞した。

 高校野球監督としても、アーティストとしても、いまだ現役。名物監督は、まだしばらく高校野球界に話題を振りまいてくれそうだ。

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