【夏の甲子園2025】SNS、甲子園も騒がせる開星・野々村直通監督が語った引き際「グラウンドで死ぬなんてダメ」 (3ページ目)
その後、仙台育英は3点を加え、試合を優位に進めている。
それでも、開星も「群羊」のたくましさを見せる。7回裏には一死三塁のピンチで仙台育英のスクイズを見破り、捕手の松本七斗(2年)がウエストを要求して難を逃れるシーンもあった。
のちに「野々村監督からウエストの指示を出したのか」と聞くと、野々村監督は「いや、全然」と答えた。
「配球は全部、部長(大谷弘一郎部長)に任せてるから。でも、キャッチャーの松本は2年生だけど、インサイドワークがよくてね。あそこも見事に外して、本当によかったですよね」
松本に確認すると、こんな内幕を明かしてくれた。
「自分も『スクイズがくるだろうな』と思っていたら、ベンチの大谷先生から指示が出たので。思いきって外しました」
8回に両軍1点ずつ取り合い、スコアは2対6に。9回表の最後の攻撃中、松本はこんなシーンを目撃している。
「監督さんがベンチでずっと叫んでいて......。監督さんはずっと気持ちが強くて、最後まで3年生を信じてくださっていました。それを見ていたら、自分も『負けてられんな』と思って、ずっと声を出していました」
二死二塁のチャンスを作ったものの、最後は力尽きた。2対6で試合終了。両チームの戦力差を考えれば、まさに「玉砕」と呼ぶにふさわしい戦いぶりだった。
試合後、開星の選手は誰も甲子園の土を拾わなかった。これは2020年の監督復帰以前からの野々村監督の方針であり、糸原健斗(阪神)らOBたちも守ってきた伝統だ。開星の選手たちは過去の栄光にすがらず、「今を生きる」ことを美学とする。野々村監督はかつて、こんな持論を展開したこともあった。
「甲子園の土は甲子園球場の備品。勝手に持ち帰ったら、窃盗罪でしょう」
試合後の会見では、野々村監督のインタビュースペースに報道陣が殺到した。どんな名言・珍言が飛び出すのか、期待してのことだろう。
試合の感想を問われた野々村監督は、開口一番、こう答えている。
「弱いほうがミスしたらダメだね。あれだけエラーしたらね。(1回裏の2失点を)せめて1点にとどめておけば」
「本当によくやった」「感謝しかない」と選手を称える発言も頻出したが、悔しさを滲ませるような言葉も目立った。73歳になっても、勝負師の血が騒ぐのだろう。
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