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【夏の甲子園2025】SNS、甲子園も騒がせる開星・野々村直通監督が語った引き際「グラウンドで死ぬなんてダメ」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 ところが、試合は思わぬ形で滑り出す。1回表の開星の攻撃、一死一塁で打席に入った3番の持田は、詰まりながらも右翼へ落とす安打を放ってみせたのだ。

 野々村監督は感服した様子で、こう語る。

「持田は野球センスがあるというのか、本当によくチャンスを作ってくれましたね。手が痛いから、あそこ(右翼方向)しか打てんだろうね」

 のちに持田に聞くと、左手は「バットを握るだけで痛い」状態だったという。

「痛み止めを飲んでいたので、1打席目はまだ大丈夫でした。2打席目以降は、痛み止めが切れてしまって......(以降は3打数0安打)」

 持田が一死一、三塁とチャンスを広げ、4番の松﨑琉惺(2年)が中堅に犠飛を放つ。開星が先取点を奪った。

 直後の守備で外野手の2失策が絡み、仙台育英に逆転を許した。それでも、この日は投手として先発した持田が粘りの投球を見せ、中盤までゲームメイクする。

 5回表の開星の攻撃では、9番打者の田中大喜(3年)が三塁線へ芸術的なセーフティーバントを決めて出塁。続く1番・小村拓矢は犠打を失敗しながらも、仙台育英のプロ注目左腕・吉川陽大に食らいつく。何度もファウルで粘り、球数を投げさせた。まさに「群羊駆って猛虎を攻む」攻撃だった。

 田中は背番号14の控え三塁手。久々の先発出場にもかかわらず、この日は2安打と気を吐いた。いかつい風貌の野々村監督であっても、「怒られても怖くありません」と言ってのける強心臓の持ち主だ。田中は言う。

「監督から『群羊駆って猛虎を攻む』の言葉を聞いて、チームがひとつになって戦うしかないと思っていました」

【いまだにたぎる勝負師の血】

 しかし、「猛虎」はなかなか揺らがなかった。

 小村が粘った末に放った強烈なゴロは、二遊間への安打性の当たりだった。ところが、仙台育英の二塁手・有本豪琉(1年)が難しいバウンドをバックハンドで好捕。そのまま二塁ベースカバーに入った遊撃手の砂涼人(1年)にグラブトス。砂が滑らかな動きで一塁に転送し、超高校級の併殺を完成させた。

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