夏の甲子園で注目を集めた好投手たちをレジェンド・山本昌が解説 最も印象に残った選手は? (6ページ目)
今大会24イニング自責点0で優勝の立役者となった京都国際・西村一毅 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る西村一毅(京都国際2年/175cm・66kg/左投左打)
今大会24イニング自責点0で優勝に大きく貢献した2年生左腕ですが、とにかくすばらしいピッチングでした。バランスのいいフォームでいつでもストライクをとれるコントロールがある。そして何より、この投手の代名詞はチェンジアップ。あれだけ腕を振ってチェンジアップを投げられる投手は、全国にもそうはいません。西村くんのように回転をかけないタイプのチェンジアップで、ここまでコントロールがつけられるのは稀でしょう。エースの中崎琉生くんのいい影響を受けているのだろうな、と感じる部分もありました。たとえば、右打者のインコースに角度よく決まる球筋。まだ細身で球速は130キロ台中盤ですが、140キロを超えてくると攻略困難な投手になるはずです。
低反発バットが導入されて時間が経ち、打者のスイングは春よりも鋭くなってきました。今回紹介した投手たちは、そんな背景があるなかで好投している点に価値があります。また、上位進出しているチームは必ずふたり以上の好投手が揃っていました。複数の好投手を育成する指導者の方々には頭が下がりますし、もはやひとりの大エースで勝ち上がる時代ではなくなったのだなと再確認しました。今回甲子園に出られなかった投手のなかにも、きっと楽しみな好素材がたくさんいたのでしょうね。
今回分析させてもらったなかでとくに印象に残ったのは、興南の田崎くんです。スケール感、フォームのバランス、球のキレとすべてに驚かされました。これからも成長した姿を見せてもらいたいですね。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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