【夏の甲子園】「大社旋風」は必然だった⁉︎ 選手主導の戦いが示した高校野球の新しい形 (2ページ目)
そんな大社のチーム力が存分に発揮されたのが、延長11回タイブレークの末に勝利した3回戦の早稲田実業戦だ。
1対1の7回表に、中堅手の藤原がなんでもないセンター前ヒットを後逸。打者走者が一気にホームまで還ってきて、大社は致命的な1点を許してしまう。それでもチームが沈むことはなかった。
再三の好守備を見せた三塁手の園山純正が証言する。
「積極志向というのをチームのテーマにしていて、藤原がああいうプレーをしてしまったんですけど、『大丈夫、大丈夫』って、チームで前へ、前へという思考がある。それが勝利につながっているのかなと思います」
9回裏、相手のミスに乗じて同点に追いつくと延長に突入。大社はタイブレークでも攻守にわたり躍動した。
【選手たち主導で考える勝つための準備】
タイブレークは無死一、二塁からのスタートとなる。ほとんどのチームがバントで走者を進めるが、10回表、早稲田実業も当然バントでの進塁を狙った。だが大社は、攻撃的守備で進塁を許さなかった。過去には、2019年夏の甲子園で智辯和歌山が星稜(石川)とのタイブレークでやった"ピックオフプレー"だ。
走者一、二塁でのピックオフプレーは、投手が投球モーションに入ると一塁手と三塁手がチャージをかけ、遊撃手は三塁へ、そして二塁手が一塁のベースカバーに入る。
早実の打者・灘本塁が三塁側へバントすると、三塁手の園山が打球を捕球して三塁へ送球し封殺。早稲田実業のチャンスを消した。
園山は言う。
「あのプレーは、自分たちで決めてやりました。普段から自分たちで試行錯誤しながら練習してきました。自分たちで研究してきたことが、あの場面でのプレーにつながっていると思います」
さらに11回表、早稲田実業はバントをせず強行策に出るが、得点を奪うことはできなかった。これは10回表の大社の守備が影響したことは間違いない。
そして11回裏、ドラマは起きた。無死一、二塁から6番・高橋蒼空に代わり安松大希が代打で出て、送りバントを成功させた。これはのちに石飛監督がベンチで立候補を募ったというエピソードが紹介されている。
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