夏の甲子園で見つけた逸材! 熊本工の2年生右腕・山本凌雅はほとんどが「ローボール」で百戦錬磨の広陵打線を追い詰めた (2ページ目)
【目標は146キロ超え】
ボール球になっても、低く外れるか、構えたミットよりも外、つまり打者の目から遠いところに投げられるから、ジャストミートの確率が下がり、長打を食らうことが少ないので大ケガをしない。低めを使えるアドバンテージはそこにある。さらに、打てそうで打てない状態が続くと、打者のイライラも募っていく。
とにかく山本のピッチングは、"安心・安全"といったところか。チームが望む勝利に、最も近づけるタイプの投手である。
コントロールの優秀さは、それ自体がすばらしい才能であり、間違いなく強力な武器である。そのわりに、あまり大きな見出しで取り上げられないのは、球速のように"数字"で表しにくいからだ。
しかし、労をいとわなければ、たとえば構えたミットにどれだけ投げられるかを表す「コントロール率」など、ぜひ取り入れてほしいと思う。制球力の指標である"ストライク率"よりも、ずっと有用なデータであると信じている。
「来年は廣永さんの146キロを超えられるピッチャーになりたいです!」
試合後の取材で、山本はそんなコメントを残した。
チラッと見た右手の指は、身長のわりには長めで、節もしっかりしていた。「この指なら、あれだけいくつもの変化球を、鋭い曲がりで投げられるはずだ」と納得したが、一方で146キロ超えはいいけど、その時は山本のすばらしい才能である「ローボール」を投げ込む技術も一緒に持っていってね、と願わずにはいられなかった。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。
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