夏の甲子園で見つけた逸材! 興南・丹羽蓮太のキャッチャーとしての所作に衝撃「ホントに1年生?」 (2ページ目)
捕手としての所作が、いちいちサマになっていて、2年先輩を相手にたった4カ月ちょっとの付き合いでこの"呼吸"は、とてもじゃないが1年生のやることじゃない。
ただただ「すごいキャッチャーが現れたものだ」と感心してしまった。
スローイングは、大きめのテイクバックからすごくしなやかなラインが出て、低い弾道で伸びていく。「ピッチャー仕様の腕の振りだなぁ」と思っていたら、中学時代は投手と三塁手がおもで、本格的にマスクを被るようになったのは興南に進学してからと聞いて、さらに驚いた。
わずか4カ月ちょっとで、これだけキャッチャーらしくなれるということは、中学時代の投手、三塁手がむしろ間違いだったのではないかと思ってしまうほど、天性のキャッチャーである。
タイムリーを打たれた次の打者の初球、「ボールから入ったほうが......」と思ったらゾーンに構えて連打を食らったり、いつの間にか打者のタイミングに合わせてサインを出して痛打されたり、悪い流れを止めるための間(ま)をつくれなかったり、劣勢になると捕手としての幼さがちょくちょく顔を出すが、そんなことは鍛錬を積めばどうにでもなる。
それ以前に、興南のような常勝チームで1年夏から「4番・捕手」という重責を担い、甲子園に出場したことがすごい。そして甲子園の大舞台で、3年生かと思わせるような堂々のプレーぶりは尊敬に値する。
田崎の渾身のクロスファイヤーを、ビシッとミットを止めて捕球した瞬間のカッコよさは、試合が終わってもこの目に焼きついている。野球選手は、こういう一瞬の"姿"が大事である。
ヒットは打てなかったが、空振りのなかにもリストを柔らかく使ったスイングにセンスのよさを感じた。バッティングだって、場数を踏めば踏むほどよくなるはずだ。
大会初日に見て驚いたのが、有田工の1年生・田中来空。そして2日目にも、とんでもない1年生が出現した。これが「甲子園の魔力」というのだろうか。まだ大会は始まったばかり。これからどんな逸材に出会えるのか楽しみでならない。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。
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