星稜高校で奥川恭伸を見て育った男がドラフト戦線に急浮上 日体大・寺西成騎が本格化 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 軽い力感でのキャッチボールながら、寺西は衝撃を受けたという。

「すごく軽いキャッチボールだったんですけど、148キロくらい出ていたと思います。すごく独特な投げ方で中村にしかできない感じはありましたね」

 寺西は今秋のドラフト会議でのプロ入りを目指している。ということは、中村のような存在と投手としての価値をかけて争っていかなければならない。そんな現実について尋ねると、寺西は「差は感じるんですけど」と前置きをしてこう続けた。

「ひとつでも上の順位で呼ばれるように、すべてをアピールしていきたいです」

 現段階での実力と注目度は、中村には及ばないかもしれない。それでも、寺西には前述したとおり恵まれた肉体と、類まれな運動能力がある。

 寺西の優れた身のこなしは、代表合宿でのウォーミングアップ中から目を惹いた。長身にもかかわらず動作が柔らかく、瞬発力が高い。自分の肉体を意のままにコントロールして扱っていることがうかがえた。

 そんな印象を伝えると、寺西はうれしそうに笑ってこう答えた。

「それは高校時代に奥川さん(恭伸/ヤクルト)をずっと見てきたのが大きいと思います。柔らかく、しなやかに体を使える動きを目に焼きつけてきたので」

【アクシデントからのスタート】

 寺西にとってドラフトイヤーとなる今年は、アクシデントでスタートした。関東地方が大雪に見舞われた2月上旬。日本体育大の野球部員は、グラウンドに降り積もった雪かきに追われた。その際、スコップで雪を掘っていた寺西は右手の中指に痛みを覚える。病院で診察を受け、中指の腱の故障で全治2カ月と診断された。

 右肩の不安がなくなり、ようやく万全に投げられるようになった矢先の故障。右肩のリハビリに辛抱強く寄り添ってくれた日本体育大の辻孟彦コーチからは「何やってんだ」と叱責を受けたという。だが、辻コーチは寺西の将来を最優先するため、無理をしないよう指導してくれた。

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