二度の指名漏れからの逆襲 攻守にスケールアップしたNTT東日本・野口泰司を都市対抗で見逃すな! (3ページ目)
野口の前の3番に座っているのは、社会人を代表する強打者・向山基生。その向山と打撃スタイルが似通ってきた点を指摘すると、野口は苦笑を浮かべてこう答えた。
「向山さんとは一緒に練習させてもらっているんです。ただ、マネしようとは思っていないんですけどね。大学の時は『自分が打たないと勝てない』と思っていましたが、社会人は状況に応じてチーム打撃ができないと勝てません。自分の場合は当たれば飛ぶとわかっているので、バッティングも社会人らしく頭を使って、力任せではなくシャープに振ることを意識しています」
NTT東日本は昨年、都市対抗東京二次予選で第二代表決定戦に進出したものの、そこから悪夢の3連敗を喫して本戦出場を逃した。秋の日本選手権も関東予選で敗退し、二大大会に出場できない屈辱を味わっている。
野口が正捕手に座った今年、NTT東日本は破竹の勢いで都市対抗東京二次予選を勝ち進んだ。初戦でゴールドジムベースボールクラブを8対0で破ると、続いてJR東日本を5対4、東京ガスを7対2で破って第一代表として都市対抗出場を決めた。
野口は3試合すべて第1打席でタイムリーヒットを放つなど、打率.455、4打点と活躍。優秀選手賞を受賞している。
野口は大学1年時から社会人2年目の今に至るまで、「背番号35」をつけ続けている。その理由を聞くと、野口は「意味はないんですけど、番号が空いていたので社会人でもつけさせてもらいました」と答えた。
来年は、別の形で「背番号35をつけたい」と言えるようになるといいですね──。そう伝えると、野口は意図を察知したのだろう。笑ってこう答えた。
「それがいいですね。そう言えるくらいの選手になりたいです」
都市対抗本戦でも普段どおりの実力を発揮できれば、野口泰司はバックネット裏から今までにないほどの熱視線を浴びるに違いない。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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