仙台育英の左腕・仁田陽翔はプロ野球選手を凌ぐ身体能力! 規格外の数値を記録 (2ページ目)

  • 田口元義●文・写真 text & photo by Taguchi Genki

【小学生の頃から目をつけていた逸材】

 須江は仁田が小学生の頃から、傑出した能力に着目していた。

 出会いは偶然だった。まだ秀光中の軟式野球部の監督をしていた頃だ。楽天の本拠地で小学生の大会があると知人から教えられ視察に行くと、目を見張るピッチャーがいた。それが、猪川野球クラブ時代の仁田だった。

 次の出会いは2019年。佐々木朗希の熱狂に沸く岩手県で、「佐々木の出身中学にいいピッチャーがいる」との情報を得て観に行った試合で投げていたのが、当時、大船渡第一中学2年の仁田だった。

「当時から身長はあまり高くなかったので、『高校では伸びないんじゃないか』っていう声もあったんです。でも僕は、仁田の体のバネの強さ、腕の振り方に魅力を感じましたね」

 仁田自身も、この頃から「強豪校で野球がやりたい」願望があったため、仙台育英に進むことに迷いはなかった。

 高校入学当時、現在の「150キロトリオ」で最もデビューが早かったのが仁田である。1年春から公式戦を経験し、2年春には145キロを計測。夏の甲子園初戦で出した147キロは、日本一の原動力となった「140キロクインテット」で最速だった。

 スピードはある。その一方で「それだけ」と評価されてしまう側面もあった。原因は安定感。それは、仁田のピッチングスタイルにも関係していた。須江が言う。

「体のサイズは違うんですけど、石井一久[寺澤4](ヤクルト、ドジャース、メッツ、西武)さんの現役時代みたいな感じです。フォアボールとイニングの数が同じくらい与えるけど、なんとか無失点に抑えるというか」

 石井は150キロを超えるストレートと切れ味鋭いスライダーを生命線とし、日米通算182勝を挙げた左腕だ。仁田もスピードボールが武器で、変化球もスライダーとチェンジアップと必要最低限の球種で勝負する。なにより、ストライクゾーンから適度にボールが荒れる点も似ている。

 仁田自身も、苦笑にじりに自己分析する。

「自分、不器用なんで(笑)。制球力もそんなにないので使える球種がそれしかないっていうのもあります。でも、『自分のよさはストレートの強さにある』と思っていて......。球が荒れることは短所になるかもしれないですけど、相手からすれば狙い球を絞りにくくなるでしょうし、そういうところが長所だと思って割りきっています」

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