二松学舎大付の監督が語る、1年生4番・片井海斗とOB鈴木誠也の共通点。「どちらも実戦向き。ただ、1年夏の時点では誠也より上」 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 大友良行●撮影 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 なぜ経験の少ない1年生がこの大舞台で活躍できるのか。
 
 市原監督は言う。

「キャプテンの小林幸男をはじめとする3年生に『片井を試合に出したい』という雰囲気がありました。3年生の理解、みんなが一丸となって戦うという意識、それらが片井を起用する勇気になっている。

 将来、二松学舎を背負っていく選手になってもらいたい選手。誠也は右方向によく長打を打ちましたけど、その部分は片井も似ているかもしれませんね。どちらも実戦向き。ただ、誠也は1年生の夏の時点でこれだけの活躍はできていなかった」

 もちろん、先輩たちから「強心臓」と言われる片井のキャラクターも大きい。

「言葉数が多いわけじゃないけど、先輩としっかりコミュニケーションが取れる。先輩からすると、愛嬌、かわいげがあるんでしょうね」

 1年生をのびのびプレーさせるチーム力が二松学舎大付にはある。市原監督の采配にもそういう意図が見える。

「前半戦はのびのび、思い切っていく。後半は勝機が見えていたので、いいかげんなことをして野球の神様にそっぽ向かれないよう手堅く」

 これまで、何度も市原監督に取材する機会があった。彼が重視するのは選手との信頼関係だ。

「選手にとって一番キツいのは、軽蔑されること、必要とされないこと。一番大事なのは、指導者と選手との間に信頼関係があるかどうか。選手たちと真剣に付き合うこと、真剣だということが伝わることが大切ですよね」

 だから、市原監督は選手の心を開こうとする。

「何か言われて『はい、はい』と答えるだけだったり、人の顔色ばかりをうかがっていたりするようでは成長できません。サインを出すのは監督でも、プレーするのは選手ですから。自分の意思を持たないと野球はなかなかうまくならない」

 2014年以降に5度も夏の甲子園に出場し、初戦はすべて勝利を挙げてきた。

「少なくとも3年に一度、それぞれの選手が在学中に甲子園に出れば、学校としての経験値が上がるし、『俺たちは甲子園に行く高校なんだ』という自負が生まれると思います」

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