怪童、浅野翔吾(高松商)が清原和博の高校本塁打記録にあと1本。「プロでスイッチヒッターも」とスカウト大注目 (3ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by Terashita Tomonori

ポテンシャル+探究

 準決勝丸亀戦、1回裏先頭打者で右打席に入った浅野への初球。125キロのインハイストレート。詰まり気味と思われた打球はそのままレフト芝生席へ。「あのコースはたたきにいったらファウルになる。詰まらせて最後に押し込むところに技術力の高さを感じる」と、視察に訪れた中日ドラゴンズチーフスカウトの音重鎮氏も絶賛した。実はここにも「怪童」の探究があった。

 6月を前に理想のスイングを考えるなか、1年前とはサイズや基礎体力に変化があることに気づいた浅野。「現状のものでは短すぎる」とこれまで83センチだったバットを85センチに変えていた。そして、「比較にならないくらい振り抜きがよくなった」と実感した直後、済美(愛媛)との練習試合ダブルヘッダーでは3発の場外弾を放つ。本塁打量産体制に入っていたことが、丸亀戦での先頭打者アーチの要因ともなった。

 そして4点リードの4打席目では、丸亀2番手のアンダーハンド・黒木雄太(3年)に対し、「変則の右投手には必要」と昨秋から準備していた左打席へ。結果はフェンス手前まで飛ぶ右飛に終わった。しかし、ヤクルトスワローズ中四国地区担当スカウトの押尾健一氏は「あまり練習していないはずなのに、スイングもキレイだし、あそこまで飛ばせるのはすごい。プロでスイッチヒッターの可能性も十分あると思う」と評価した。

丸亀戦の4打席目で左打席に立った浅野丸亀戦の4打席目で左打席に立った浅野この記事に関連する写真を見る こうして3打数2安打1打点2得点1盗塁とダイヤモンドを走り回った浅野の活躍もあり、3大会連続22度目の甲子園に王手をかけた高松商。決勝の相手は3大会連続で英明。コロナ対策を敷くなかにあっても準決勝では2000人以上が詰め掛けている。決勝では、高校野球ファンのみならず香川県民のヒートアップは必至だ。

 だが、浅野が準決勝後に話したのは、やはり今大会言い続けている言葉だった。

「一個ずつアウトを取って守り勝つ野球をする。27個アウトを取ることは大変ですが、そのアウトを全力で取りにいきます」

「守りからリズムをつくって攻撃につなげていく」。もちろん、その攻守の柱は浅野。そういえば、かつてスコアラーを経験した前出の押尾氏は、以前こんなことも口にしていた。

「僕がチーフスコアラーだった頃、(ウラディミール・)バレンティンはよく相手投手を研究していた。それが2013年の60本塁打につながったと思います。浅野くんのポテンシャルはすごいけど、将来的にはそんなバッターになってほしいですね」

 英明の先発は最速142キロ左腕・寒川航希(3年)が濃厚。はたして、春に悔しい思いをし、入念な準備をしてきた浅野がどんな「探究成果」を大一番で見せられるかーー。

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