元日本ハム芝草宇宙もほれ込む逸材。帝京長岡の145キロ右腕は歴史を動かせるか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

帝京長岡のプロ注目右腕・茨城秀俊帝京長岡のプロ注目右腕・茨城秀俊この記事に関連する写真を見る「北海道で野球教室をやっていたこともあって、『素材のいいピッチャーがいる』と聞いて見に行ったんです。『こういう子を育ててみたいな』と感じました」

 将来はプロ野球選手になりたいという希望を持っていた茨木にとっても、帝京長岡は魅力的な高校だった。「芝草監督の指導を受けたい」と茨木は新潟へとやってきた。

 投手として最大の長所は、回転のいいストレートだろう。指にかかったストレートは打者に向かって加速するような体感スピードがあり、捕手のミットを突き上げる。茨木には強いこだわりがある。

「シュート回転するのが嫌いなんです。シュートが強くなると、自分のなかで悪いフォームの印象がついてしまう感覚があって。リリースでしっかりと体の力をボールに伝えて、きれいな回転で強いボールを投げることを意識しています」

 投げていてもっとも快感を覚える瞬間を聞くと、「アウトローのストレートで見逃し三振をとるのが一番気持ちいいです」と即答だった。現時点では最速145キロと突出した数字ではないものの、その価値は数字だけでは計れない。

プロ注目の強打者を無安打

 2年秋には新潟大会3位に食い込み、北信越大会でも好投してスカウト陣の注目を集めた。念願のプロ入りへ大事なアピールの場になるはずだった春の新潟大会は、一転して試練を味わった。

 4回戦の新潟明訓戦で、茨木は序盤から大量失点を重ねる。

「ボールがバッターのベルト付近の高さばかりに集まって、修正できないままズルズルいってしまいました」

 茨木は早々にノックアウトされ、チームは4対14の6回コールド負け。茨木にとっては「自信があったのに、ガクッときた」敗戦だった。

 ショックは大きかったが、課題ははっきりした。茨木は芝草監督からこんなアドバイスを受けている。

「低めがあるから、高めが生きてくるんだ。低めに集められるようになれば、必ず違った世界が見えるようになるから」

 春の敗戦からわずか2週間。5月14日の帝京長岡の野球部グラウンドには、10人近いスカウトが集まった。この日は日本航空石川との練習試合が組まれており、日本航空石川のスラッガー・内藤鵬と茨木の直接対決が実現したのだ。

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