2021.03.21

振り返れば大塚瑠晏。東海大相模を救ったフィールドの軽業師の超絶守備

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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 振り返れば瑠晏がいる──。

 そう言いたくなるほど、東海大相模のショート・大塚瑠晏(るあん)は数多くの打球をさばいていった。

 選抜高校野球大会2日目・東海大相模(神奈川)対東海大甲府(山梨)の好カードは、「サプライズ」で始まった。

打っても延長11回に決勝のタイムリーを放った東海大相模・大塚瑠晏 東海大相模はエース左腕・石田隼都ではなく、直前のメンバー変更でベンチ入りした右腕・石川永稀を先発投手に起用。石川は公式戦初先発だったが、門馬敬治監督は「僕のなかでは当たり前に起用しました」と奇策であることを否定している。石川は8イニングを投げ1失点と試合をつくり、延長戦で競り勝つ大きな要因になった。

 その石川の好投を支えたのが、大塚だった。なにしろ、石川が投げた8イニングで大塚が処理したアウトは9個にのぼっているのだ。

 石川の先発起用が伝えられても、大塚には動揺はなかったという。

「チームの大きな軸として石田がいますけど、石田が投げなくても石川の調子がよかったですし、不安はありませんでした」

 試合開始直後の1回裏、東海大甲府の1番打者・猪ノ口絢太が放った打球は、マウンドから飛びつくようにグラブを差し出した石川の横をすり抜けていった。だが、その先にショートの大塚が颯爽と現れ、恐るべきスピードでゴロをさばき、送球する。50メートル走を6秒フラットで駆け抜ける俊足の猪ノ口でも、この大塚の流れるようなフィールディングには敵わず、一塁まで間一髪到達できなかった。

 公式戦初登板が甲子園という非日常空間に立った石川にとって、先頭打者の出塁を許すか、アウトにするかでは天国と地獄ほどに違う。大塚のフィールディングは、アウト1つ以上の価値があった。