本職は介護業。異色の非エリート選手が都市対抗出場でプロ入りを狙う (3ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Kobayashi Hiroko

 谷口監督が「これまでなかなか見たことがない」と言うほど、ど迫力の打球をバックスクリーンに叩き込んだ。これを次の試合の新潟医療福祉大・漆原大晟(現・オリックス)を視察に来ていたNPB球団スカウトが絶賛。それを伝え聞いた大友は大学卒業後も高いレベルで野球を続けることを決意。親には「1年間だけ」と懇願して仕送りを増やしてもらい、アルバイトを辞め野球に集中することにした。

 とはいえ、3部リーグの日の目を見ない環境。いくつかの企業チームの練習に参加したり、プロ志望届を提出するなど、必死にアピールした。

 そんななかで手を差し伸べてくれたのが創部したばかりのハナマウイだった。もともと大友と仲のよかった長野大OBの引木拓己がおり、谷口監督とハナマウイ・本西厚博監督がロッテで一緒だった縁もあった。

 時期にもよるが多い時期は週4日、都内の介護施設で朝からデイサービスの送迎車を運転し、体操指導や昼食の準備、事務作業などをこなす。また週2日は千葉県富里市のグラウンドで練習があり、週1回のオフもそれぞれ自主練習に励んでいるという。

 そして、「どこよりも選手同士の仲がいい」と話す結束力。打線のつながりや粘り強い守備を武器に都市対抗予選で快進撃を続け、2013年の日本選手権を制した日本製鉄かずさマジックや谷沢健一氏が総監督を務めるクラブチームの雄・YBC柏を破り都市対抗初出場を掴み取った。

 それでも大友は夢のスタートラインに立ったにすぎない。社会人2年目となる来年はNPBのドラフト指名を目指している。大学入学時の自分を振り返り「まさかこんなことになるとは......」と笑い、「あきらめずに続けることは大事ですね」と感慨深く語る。

 そして、今はかつての自分と同じような環境にいる選手たちにも「どうせ無理と思っているかもしれないけど、頑張ればいいことがあると思ってもらえるようなきっかけになれれば」と希望の星にもなっていきたいと考えている。

 月並みな表現だが「人生、何が起きるかわからない」。それを体現する大友の下剋上物語は、この都市対抗からさらにそのスピードを上げていく。人生初の全国舞台は26日の四国銀行戦。ひと振りでまたその運命を大きく変えていくつもりだ。

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