最速156キロのドラフト候補が、変化球ピッチャーを目指す理由 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

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 大学4年春のリーグ戦で遅まきながらデビューを果たし、多少の話題にはなったものの、7月には再び肩とヒジの不調で離脱する。常に故障の不安につきまとわれた当時を小又はこのように振り返る。

「肩が万全でないなかでヒジを痛めて、ヒジをかばうと肩を痛める。そんな悪循環で、いつも探り探りで練習していました」

 故障を抱えてNTT東日本に入社し、そこで出会ったのが名投手コーチとして知られる安田武一コーチだった。安田コーチは練習、試合での登板間隔を小又の体の状態に合わせて慎重に管理した。昨年のシーズン中から体の不安が軽減されていき、万全になった今年は「みんなと同じ登板間隔でやれています」と小又の表情も明るい。

 現在は最速156キロを計測するまでになったが、小又は安田コーチからこんな言葉をかけられているという。

「150キロを投げる変化球ピッチャーになれ」

 その心を小又はこう説明する。

「自分のなかでは変化球のほうが自信はあるんです。ストレートの球速は出ますが、見せ球と考えています。変化球主体で抑えているので、剛腕というより変化球ピッチャーです」

 この日の巨人二軍戦も、高速で変化するスプリット、カットボールなど、変化球で打ち取るシーンが目についた(2イニングを投げ、被安打0、奪三振0、与四球1、失点0)。常時150キロを超えるスピードがありながら、ストレートを「見せ球」ととらえている理由は、その球質にある。

「ラプソード(回転数や回転軸など詳細な投球データを取得できる計測機器)で計ってもらったら、僕のストレートはホップ成分が低いことがわかったんです。スピードはあっても三振がとれるボールではないので、自分は打ち取るタイプのピッチャーなんだなと。あらためて数字を見せられて、自覚できました」

 小又のボールは打者のバットを越えていくような球質ではなく、ゴロを打たせるのに適した球質だった。

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