広島商は「伝統×今の野球」で復活。個性重視で機動力に強打が加わった (3ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 地方大会終盤、荒谷の目指してきた"新・広商野球"が結実する。3年連続夏の準決勝での対戦となった広陵を13対5で退けた。決勝の尾道戦は序盤から打線がつながり10得点。相手の猛追は許したものの、伝統の無失策で重圧のかかる一戦を戦い抜いた。

 選手、副部長に続き、今回監督として聖地に立つ。甲子園のグラウンドで見た景色は今でも鮮明に思い出せるという。

「選手として初めて立った甲子園、15年前グラウンドでノックを打たせてもらった時の甲子園。その両方の空気や景色は忘れられません。本当にいいところで、大きな達成感を味わわせてくれる場所。指導者、教育者として、それを選手たちにも経験させたいと思い続けてきました」

 甲子園から遠ざかるなかでも、通算8度目の全国制覇への思いを絶やすことはなかった。今回の復活出場に大きな喜びを感じながらも、「あくまで通過点」と強調する。

「前回は大会初日の試合で初戦敗退。まずは1勝という思いが強くあります。その先で目指すのは、もちろん全国制覇。全国制覇への思いを失わなかったからこそ、今回の優勝があるのは間違いありません」

 今回で、大正、昭和、平成、令和の4元号での甲子園出場を果たしたことになる。それについても「毎年毎年、それぞれのチームが本気で全国制覇を目指した日々の積み重ね。その結果だと思います」と語った。

 15年の歳月が流れ、周囲からは「古豪」と呼ばれることも少なくない。新元号初の甲子園で結果を残し、強豪へと返り咲く。

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