軽井沢高校が見せた成長の夏。3年生が先輩女子マネの思いをつなげた (2ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • photo by Shimizu Takeshi

 遠山(現・屋代高校監督)が述懐する。

「夏まではマネージャーの小宮山がいて、単独出場というひとつの目標があって、誰も辞めなかった。でも秋になると、勉強と部活の両立の難しさや、手を抜きたいという選手もいて温度差が出てきてしまった。部員が減っていくなかで、残った選手たちを集めて聞きました。これまでのようにハードな練習をするのか、それとも仲間を引き留めるために緩くするか。そうしたら『来年、1年生が入学してくる時に恥ずかしくないチームでありたい』と。その言葉で私は吹っ切れました」

 2017年秋から翌年の春にかけては、再び北部高校と坂城高校との連合チームになった。平日は軽井沢で練習をして、週末は北部高校の飯綱グラウンドに通った。

 2018年の春に新1年生が入部したおかげで、その年の夏は単独出場。だが秋は、また部員が減り連合......というように、単独と連合を繰り返した。

 それでもまた今年4月には新入生も入り、この夏は単独での出場となった。

 そして、7月8日、小宮山マネージャーが思いを託した3人の最後の夏が始まった。初戦の相手は松本美須々ヶ丘高校。

「彼らは1年から出ているわけだから、試合慣れしているはずなのに......試合序盤にエラーするんですよ(笑)」

 佐藤は苦笑いを浮かべる。

 だが、致命的なエラーにはならなかった。試合は1点を先制したが、逆転され、同点に追いつくも、再び勝ち越されるというシーソーゲームとなったが、最後は1点が重くのしかかり、2対3で敗れた。

 それでも、6回の一死満塁のピンチではサードゴロをホーム、ファーストと転送しダブルプレーを完成。いつそんな守備ができるようになったのだろうと思わせる会心のプレーもあった。

 この春に異動によって軽井沢高校を去った遠山は、選手には知らせずスタンドから試合を見守った。

「内藤(淳次郎)は入ってきた時、フライが捕れませんでしたし、バットにボールが当たらなかった。山崎も星(尚也)も、中学時代は補欠でした。それでも『一生懸命やればホームランを打てる』とだましながらやっていたら、みんなホームランを打ちました(笑)。

 去年、彼らが2年の時も1対2と1点差で負けました。先制されて、追いついたけど、勝ち越された。今年はしっかり先制して、主導権を握った。そして逆転されても追いついた。去年より1点の重みを理解していましたし、ひとつ階段を上がったかなと思います」

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