すでにプロ10球団がマーク。福井の公立校に最速145キロ左腕出現 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 偵察に来ていた高校のスピードガンによると、この日の玉村の最高球速は139キロだった。自身の最速である145キロには及ばない数字である。だが、玉村の真価は球速だけでは測れない。軽い腕の振りでも捕手のミットに収まるまで勢いが死なない。球質のよさにかけては高校球界屈指だろう。この日のバックネット裏には複数球団のNPBスカウトの姿もあり、すでに10球団が玉村の動向をチェックしている。

 クールダウンを終えた玉村は、この日のピッチングを振り返ってこう語った。

「ボールが死んでいて浮くことが多かったですし、狙ったところにもいきませんでした」

 以前までは、春木監督に言わせると「いつも『オリャ~!』と全力で投げる男気ピッチング」だったという。だが、春木監督の助言を受けながら経験を重ね、打者の顔色を見ながらピッチングに強弱をつけられるようになった。玉村に「ペース配分」について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「初回にちょっと力を入れて、チームが勝っていたら2回以降は少し抑えめにします。5回が終わった後にグラウンド整備があって仕切り直すので、6回にまたギアを上げて、7~8回は様子を見て、9回にまた力を入れる感じです」

 ただ恵まれた能力に任せて投げている投手ではない。フォームも自分なりに投げやすい形を模索して、アレンジしているという。春木監督は「トレーニングや食事への探求心もある」と認めている。

 それにしても......と思わずにはいられない。丹生という高校から逸材左腕が育つのは、「ただの偶然なのだろうか?」と。

 今から8年前、丹生には田中優貴というドラフト候補がいた。スカウト陣もその動向を注視したサウスポーの好素材は社会人・三菱自動車岡崎に進み、その後はBCリーグ・福井ミラクルエレファンツでプレーした。全国的な知名度こそないものの、知る人ぞ知る存在だった。

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