再び甲子園で下剋上を。白山高校のハチャメチャぶりは今年も健在だ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 木本との一戦は1対1の同点のまま、延長戦に突入した。10回表、白山の先頭打者としてライト線に三塁打を放ったのは、甲子園経験者の駒田である。

「その前のチャンスで打てなかったので、最低限のことはできたという感じですね」

 駒田の言う「その前」とは、5回表に迎えた二死二、三塁のチャンスのことだった。打席に入った駒田は不敵な笑顔を浮かべ、構えに入っていた。結果的にサードゴロに倒れるのだが、いかにも「こんな場面で打席に入れるのがうれしくてしょうがない」という雰囲気だった。

「硬くなったら打てやんかなと思うので。甲子園を経験したことで、多少のことでは緊張しなくなりました」

 駒田の三塁打を皮切りに、バッテリーエラーで白山は勝ち越し点を奪うことに成功する。さらに甲子園で代打安打を放って大歓声を浴びた4番・河村岳留(たける)が、詰まりながらセンター前に落とすダメ押しタイムリーで続く。白山は10回表に3点を奪い、試合を決めたのだった。

 試合後、東は苦笑いを浮かべて「こんな感じです」と言った。試合に勝ちはしたものの、まだまだ力が足りない。そう言いたかったのだろう。

「バッティングは冬場に振り込んできたんですけど、今日のような軟投派相手だとボールを待ち切れずにハマってしまうんです。でも、経験を積ませたい選手も出せたし、収穫はありました」

 この日、白山のスタメンは9人中6人が下級生で占められた。3年生は駒田、河村とショートの強打者・下中宙(そら)のみ。キャプテンとしてチームを束ね、木本戦では代打でバント安打を決めたフィリピン出身のパルマ・ハーヴィーは言う。

「3年生のスタメンは少ないんですけど、夏に勝つためには試合で力を出し切れる選手が必要だと思います。その意味で3年生の力は大事なので、これからもっと力を出し切れるようにしたいです」

 打線は湿っていたものの、手堅く守り、粘り勝ちしたように見えた。かつては東が「考えられん!」と嘆くような、信じられないミスや事件が頻発したチームの面影は感じられなかった。

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