U-12仁志監督が伝える木内イズム。「サインに縛られず考えるクセを」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

アジア選手権大会に出場する侍ジャパンU-12代表の選手たちアジア選手権大会に出場する侍ジャパンU-12代表の選手たち 監督がサインを出す。それを咀嚼(そしゃく)し、自分なりの答えを出す――そんな野球を木内監督から受け継ぐ仁志監督は、U-12の選手たちに対してこんなメッセージを発した。
 
「今の選手たちは、1球1球、ベンチから言われたことをやろうとします。だから1番バッターでも、プレイボールがかかった直後、ノーアウト、ランナーなしの1球目からベンチを見る。サインなんか、出るはずがないのに。そういうときに『ベンチを見る必要はないよ』と言うんです。

 よく子どもたちの指導者は『楽しめ』って言いますけど、そもそも楽しめってどういうことなのか、説明できる人がどのくらいいるのかなと思います。何が楽しいのかも教えていないのに『楽しめ』と言ったら、子どもたちはどうするか......そう、笑うんです。試合中、笑うことが楽しむってことなんだと思っちゃうんです。でも、そうじゃない。必死になったり、緊張でガチガチになったり、そういうことも楽しむことの1つです。充実感を味わうということが楽しむということであって、子どもたちがその充実感を味わうためには、言われた通りにやるんじゃなくて、自分で考えて野球をやることが大事になってくるんです」

 仁志が初めて監督を務めた2014年、フィリピンのマニラで行なわれた『第8回BFA U-12アジア選手権』で侍ジャパンに選ばれた15人のうち、ほとんどの選手はその後、日大三、早実、桐蔭学園、流経大柏、東海大甲府、大阪桐蔭、日本航空石川など、甲子園を狙える高校に進んで野球を続けている。

 なかでも二松学舎大付に進学した山田将義は今年、1年生ながらもキャッチャーとして東東京大会の全試合に出場し、4割近い打率を残して優勝に貢献。この夏、早くも甲子園の土を踏んだ。仁志は言った。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る