プロ野球を席巻する「富士大」出身の選手たち。なぜ彼らは成功するのか (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 指導については、「選手のよさを消さない」ことに重きを置き、なかでも10年携わった投手指導については反復練習の重要性を説く。

「ブルペンはあくまで自分の投げ方を生かしていく場。そこであれこれ投げ方を試行錯誤するのではなく、それよりもネットスローやシャドーピッチングの段階で細かく『基本動作はこうなんだ』と反復練習をする。それを雪の時期に身につけて、マウンドで投げる頃には基本動作が意識しなくてもできるようになる。そうすれば、シンプルに力を伝えやすいフォームを各自で作ることができます」

 この"雪の時期"については外野手の楠研次郎主将も「一番伸びるのは、地道な練習をするこの時期です」と頷く。

 そして豊田監督もプロで活躍を遂げている選手の共通点として、決して楽しいとは言えない練習しかできない時期の取り組み方を挙げる。

「山川も外崎もすごく練習をしていましたし、多和田も小野も黙々と練習に取り組んでいました。能力に加えて熱意と考え方、自覚がないと絶対に伸びません。これだけ寒くて、雪もあって外で練習もできない。これは根気がいります。でも、この地道な練習をする時期がすごくプラスに働いているとも思えるんです」

 山川をはじめ、外崎、多和田、小野といった選手たちは、高校時代に輝かしい実績を残したわけでもなく、プロから注目を集める存在でもなかった。いずれも大学に進み、厳しい環境のなかで黙々と鍛錬を重ね、力をつけていった。
 
 哲学者のウィリアム・ジェームズは「水泳は冬の間に上達し、スケートは夏の間に上手になる」という言葉を残している。それと同じ原理が、富士大の強さの源になっている。

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