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スカウトが言う「甲子園のホームラン
量産は危険なシグナル」の真意 (5ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 また、守備側にそんな乱れが生じても、走者は「この打球なら三塁打」「このタイミングなら三塁ストップ」と決めつけ、離塁もせず、ボールの位置も確認せず、ホームインできたのにできなかったケースも少なくなかった。三塁コーチャーの指示ミスも目立った。簡単に点が取れるようになったことで、やるべきこと、基本がおろそかになっている。

 これは、高校野球だけの問題ではない。今春のWBCで、日本は準決勝でアメリカから4安打しか打てずに敗れた。山田哲人、筒香嘉智、中田翔ら若手のスラッガーの打力に期待が集まったが、メジャーリーガーの強い球、動く球をとらえきれなかった。

 日本が世界で戦うためには、ホームランやパワーに頼る野球では難しい。かつてWBCを連覇したときに盛んに言われた"スモールベースボール"が必要なときが必ず来ると誰もが再認識したはずだ。

 プロ入りするのは、高校時代にチームの中心だった選手。高校時代にホームランを量産した選手でも、プロ入り後はバントや進塁打を求められる役割に変わることは珍しくない。本塁打を打てるのは選手として大きな魅力であり、それを否定する気はないし、大いに伸ばしてほしい。

 だが、本塁打が打てるからといって、野球の面白さであるきがなくなり、小技や細かいプレーなどがどんどん疎(おろそ)かになってしまっては、日本野球の将来に影響する。高校野球が今のような状況では、永遠に世界で勝てるようにはならない。

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