あの宇部商「サヨナラボーク」の真実を、捕手・上本達之が明かす (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

ボークの宣告は主審のナイスジャッジ

──15回の裏、豊田大谷の攻撃。先頭打者がヒットで出塁。セカンドのエラーで無死二塁、三塁になりました。1点取られれば負けになる宇部商業が選んだのは敬遠策。ノーアウト満塁で7番打者を迎えました。

上本 持田泰樹くんは引っ張り専門の右バッターだったので、サード方向にしか打球が飛びません。そのことはわかっていたので、インコースに投げてカウントを稼ぎました。

 本当に甲子園での試合が楽しかったので、僕はこのままずっと続けばいいと思っていました。ピッチャーの藤田は相当疲れていたのでしょうが、負けたくないというよりも、もっと試合を続けたい......と。インコースに投げればファウルになって、このままずっと試合が続くだろうと考えていました。

 そのとき、それまでの簡単なものから、複雑なサインに変えたのです。一度フェイクでアウトコースのストレートのサインを出してから、本当のサインでインコースに投げさせようと思った。それまでも、二塁ランナーがいる場面ではそういうことをすることもありました。ただ、事前に確認をしませんでした。本来であれば、事前にマウンドに言って手順を伝えるべきでした。でも、暑さと疲れがあって......ピッチャーはフェイクのサイン通りに投げようとしたのに、続けて僕がインコースのストレートのサインを出したから「あれっ?」となったのです。

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